2017年鑑賞映画映画ベスト10【邦画編】

さて、2017年も暮れてまいりました。毎年恒例の映画感想文の追い込みがあり(笑)、そして今年のベスト10の発表をしたいと思います。(ちなみに昨年はコレ

毎年のことですが、基本的に★5〜4.5をつけた作品を中心に、改めてベスト10を組みたいと思います。なので、評価的には下の作品でも、ランキングでは上位に来ることもありますのでご了承を。今年は、総計で163本の映画を鑑賞させていただきました。今年は夏前に長年の懸念だった左足の手術をやり、夏から初秋にかけては車椅子やリハビリで劇場に全く通えなかったですが、何とか毎年150本以上の作品を見るという目標はクリアできたかと思います。

毎度のことですが、あくまで私が2017年に観たものなので、2016年年末公開で初春に観たものも含まれます。また、今年ですと、「野良犬」「天国と地獄」などの黒澤作品や、「台北ストーリー」「ヤンヤン 夏の想い出」などのリバイバル上映作品は除いています。

昨年は洋画から行きましたので、今年は邦画から始めたいと思います。今年の邦画はちょっと寂しい評価の作品が続いたので難しいのですが、以下10作品をラインナップします。

1位 人生フルーツ

ドキュメンタリーというのは人が生きていく営みを、カメラを使ってあぶり出していくものだというのなら、本作は津端夫妻というある一組の日常を追っているに過ぎない。でも、その中に夫婦の歴史があり、津端一家のナチュナルな生き方があり、高度経済成長という波を押し返しながら、人と自然が共生して生きていくことを追求していく反骨魂のようなものすら感じる。ドキュメンタリーとしてこれだけ高評価したのは、マイケル・ムーアの「ボウリング・フォー・コロンバイン」以来ですが、メッセージ性を色濃くしたあちらの作品とは違い、シンプルな中にも様々なテーマを、しかも1時間30分という短い上映時間の中に詰め込むとは、、映画のテーマではないですが、本作こそ、人生の玉手箱のような作品だと思います。

2位 ハルチカ

吹奏楽を主題とした部活青春映画。自分も吹奏楽に育ててもらったところもあるので、自分の思いが多分に入っていることも否めませんが(笑)、それでも映画の見所になっている音楽室の固定カメラシーンは圧巻の一言。予告編から見ると、すごく柔らかいだけの青春ドラマかなと思ったのですが、前半の部活仲間を集めるシーンや終盤のミュージカル風の仕立てまで見どころはたくさん。出演俳優の不祥事で少し作品のイメージが傷ついたのがすごく残念ですが、それを含めて、応援したい作品になっていると思います。

3位 散歩する侵略者

明確な形の宇宙人が出てこない、宇宙人による地球侵略映画。別にSFだからといって、宇宙人が目がつり上がったり、銀色に光っていたりしなくても、ちゃんと見かけが普通の人間が宇宙人(侵略者)として成立していることに、物語の力さえあれば観る者を惹きつけるということに感心させられました。鑑賞後、原作小説(もとは舞台劇ですが)も読ませていただきましたが、映画ほどのスペクタクルはないものの、いろんなキャラクターの主観が見えてくる構成になっていて、こちらもオススメです。

4位 キセキ あの日のソビト

GReeeeNの誕生秘話に迫った、ある4+1人の若者の青春劇。好きなことを仕事にできることは素晴らしいけど、同時にそれはすごく辛いことでもある。そんな苦しい中でも、当初は思っていなかった方法でも夢を叶えることができることを素直に教えてくれる傑作。GReeeeNのいろんな歌に想い出が蘇ることも然りですが、同時に彼らの曲を聞いて、昔考えていたことや、これからやっていきたいことに思いを馳せれる作品。ストレートでなくても、変化球でもいいんだよというメッセージ性には感動します。仕事や夢に悩んでいる人は必見です。

5位 14の夜

描かれるのが1987年という時代設定で、そう観ている自分と違わない年代。田舎、ダサい中学生、エロ、ヤンキーという様々なキーワードと、当時の設定に共感できるところが多々あり、この田舎の暗い閉塞感を14歳の若者がエロと若さのパワーで失踪していくのが凄く爽快でした。監督・脚本の足立紳は脚本家として参加した「百円の恋」もそうでしたが、こうしたダサ・カッコいい作品はすごく上手い。本作の主人公を演じた犬飼直紀くんは、2018年大河ドラマ「西郷どん」にも出演するらしく、今後が期待の若手です。

6位 愚行録

ある夫婦の惨殺事件を通して、人間の愚行に迫る心理ミステリー。ミステリーとしては予告編にあるようなどんでん返しもあり楽しめるのですが、本作のテーマはあくまでタイトルにもある”愚行”という行為。SNSイジメに代表されるように、暴力とは違った形で人をこけおどしだり、蔑んだりすることが増幅してしまうと、恐ろしい出来事を招いてしまうことを暗に象徴しているように思えます。重苦しいドラマですが、バームクーヘンのように1つ1つのエピソードをしっかり重ねつつ、真実にたどり着かせる演出方法の巧みさにも驚きました。

7位 火花

4位に上げた「キセキ」とはまた違った夢に迫った作品。こちらは夢破れる男たちを描きながらも、その夢に真剣に向き合うことで見えてきた人の本質に迫っている分だけ味わい深いなと思います。どんな仕事の分野でもそうですが、仕事ができるできない以上に大事なのは、人としてちゃんと成長できるか否かということ。実際に生活の糧にする仕事だからこそ、そのことを真剣に追求する男たちの姿はどこまでも美しいのです。原作の全てのエピソードが盛り込みきれていないのが少々残念ですが、お笑いライブのシーンなどヒシヒシと熱が伝わるシーンなどは心を揺さぶられること必死です。

8位 しゃぼん玉

犯罪者の逃避行モノでありながら、宮崎の美しい風景と人々が心を洗っていくという作品。まぁ、典型的な展開といえばそれまでですが、主人公の抱える闇のようなところの描き方が思ったよりも深く、そこと宮崎の山間部の原風景が彼の心を癒やしていく様は観ている者を惹きつけます。市川悦子の安定した演技力も作品の屋台骨を支えていますし、エンドクレジットの情景が何とも見事な感じの作品でした。

9位 恋妻家宮本

離婚届の勘違いを発端とした、ある中年夫婦の危機を描いた作品。根底にコメディの色彩があるので笑って観ながらも、どこか自分たちも当てはまるところがあるなという危機感を持った夫婦も多いのではないでしょうか(笑)。中年夫婦になった宮本夫妻だけではなく、彼らの若い時期、そして息子夫婦と、教師宮本の教え子である井上と菊地原の関係など、様々な世代と時代のカップルたちの姿を描きながら、それぞれの問題を投影しながら描く様もなかなかと思った作品です。個人的に、鑑賞後に重松清の原作「ファミレス」も読んだのですが、宮本と同じ世代のお料理教室のオッサンたちも出してほしかったな(あと、料理シーンも)と思いますが、映画作品としてはコンパクトに良くできていると思います。また、本作を楽しんだ人には、ぜひ原作小説で同じテーマの違った味わいを楽しんで欲しいなとも思います。

10位 月と雷

寂しさを知る”根あり草”と、自由に生きる”根無し草”の不思議な交流を描いた物語。人は1人で生きているようで、実はいろんな人の影響や愛情を受けているなと素直に感じる作品。愛を感じてしまった以上、人はそれに執着し、一度裏切られるとどん底に突き落とされる。それでも、人は愛を求めてしまう。。自由に生きたいということと、愛されたいという相反した思いの狭間で、実は私たちは挟まれながら苦しく生きているのかもしれません。それでも、”根無し草”にはなれないですけどね。

今年の邦画は、評価の平均点は高いものの、ずば抜けた傑作はなかったかなと思います。次は洋画編へと続きます。

コメントを残す