『キセキ あの日のソビト』:GReeeeNの名曲にのせて、好きなことを続ける大切さと、求められることにあきらめない眼差しを教えてくれる作品!

キセキ

「キセキ あの日のソビト」を観ました。

評価:★★★★★

父の反対を押し切って家を飛び出したミュージシャンのジン。所属しているメタルバンドのスカウトを受け、順風満帆な出だしではあったが、自分たちのやりたい歌とプロデューサーが求める音楽と乖離があり、徐々にアーティストとしての限界を感じ始めていた。一方、父の背中を追って医者になる勉強をしていた弟のヒデだが、自分の学力の壁を感じ、歯科医を目指す方向にかじを切っていた。無事に歯学大に合格したヒデはクラスの仲間たちと、好きな音楽をやるために作った曲を兄のジンにアレンジを頼む。ジンはヒデたちの才能を見抜き、自分の夢を託すことを決意するのだが。。松坂桃李と菅田将暉のダブル主演で、“GReeeeN”の名曲『キセキ』誕生の裏に秘められた実話を映画化した作品。メガホンを取ったのは、「腐女子彼女。」の兼重淳。

歯科医として活動をしながら、アーティストとして活躍している”GReeeeN”。メジャーデビューが2007年ということで、僕が社会人になった後なので、ヒット曲は知っていたものの世代ではない感じです。それでも彼らが現在に至るまで、本業は歯科医であり、ファンの前にも全く顔を出さずに10年間の活動をしているということに興味はありましたし、彼らの歌の中でも「キセキ」は好きで、聴く機会も多い曲(球場によく流れるんですよね笑)なので、楽しみな鑑賞だったのですが、これが期待以上にいい作品でした。バンド好きな人にはもちろん、夢を目指す人、逆に夢に悩んでいる人にも是非観てほしい作品です。

映画の中で、僕が特に共感したキャラクターは兄のジン。彼は音楽が好きで、アーティストになりたくて、アーティストになるのです。小さい頃から教えられ、きっと今も多くの人が憧れているであろう”好きなことを仕事にできた人”なのです。でも、好きなことを仕事にするということは、好きなことに対しても冷たく当たれる、第三者的な目線を持たないと大成はしないと思っています。たいていの人は、ときには妥協したり、嫌なことをしないといけないことは、その物事が好きすぎるからこそ余計に苦しいはずなのです。好きなことを仕事にすることは、決して幸せなことではない。ジンは音楽プロデューサーに「売れる曲」を書けと、バンドのやりたい方向とは真逆の音楽を求められることがその典型なのです。世の中が求めていること、そして、それに自分が何を応えられるかを探すこと。若者が大人になるときに通過する大切なことが、この映画ではストレートに描かれるのです。

この映画が更に素敵なのは、その「世の中に求められること」をするだけが人生ではないというところ。たとえば、これが僕自身に当てはめてみると、僕は「映画は好き」だけど、ITがそれなりに得意なのでITエンジニアというという仕事をしています。でも、このエンジニアという仕事が全てではなく、「映画が好き」ということも自分の中では今でも突き詰めています。「好きなこと」は仕事だけで花咲かせるだけではない。好きなことをとことん突き詰めることでGReeeeNのように、本当に夢のようなキセキが起こることもあるかもしれないし、ジンのように仕事である音楽の中で自分の居場所を発見することもある。家族のことであったり、自分の身体のことであったり、好きな人のことであったり、、、好きなことを続けていくことで、「好きなこと」そのものだけからではなく、そこから学んだことや、そこから生まれた出会いが人生を彩らせてくれるのです。小さい頃は、好きなことを仕事にするということしか学校で教わらず、成長して、それが無理だと分かった途端に好きなことを放棄してしまう人も多いですが、若き時も、老いた時も、好きなことは好きなことで突き詰めて欲しい。そして、その中で自分が必要とされることには諦めずに応えて欲しい。人生の中で大切なことを、素敵な歌とともに教えてくれる傑作だと思います。

次回レビュー予定は、「君と100回目の恋」です。

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