『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』:家と人の人生はうまく回っていくと、人生そのものが楽しくなることを素直に描いている作品

ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります

「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」を観ました。

評価:★★★★

全米ロングセラーとなっている同名小説を、「ウィンブルドン」のリチャード・ロンクレインが映画化した作品。ニューヨークに古くあるアパートメントで、年老いたために部屋を売りたい老夫婦のドタバタ模様をハートウォーミングに描きながら、その老夫婦がそのアパートメントで暮らしてきた日々をフラッシュバックを挟みながら描いていく作品。老夫婦を演じるのは、「ミリオンダラー・ベイビー」のモーガン・フリーマンと、「クーパー家の晩餐会」でも元気な姿を見せていたダイアン・キートンが小気味いい演技で魅せてくれます。

先日の「ドリームホーム 99%を操る男たち」の感想文でも、家を持つという夢のことについて触れました。「ドリームホーム」ではその家を持つことが、人生を圧迫していく負の側面をあぶり出していたのに対し、本作では逆に、その家という存在の中に人の生き様が刻まれていくという正の側面を描いていると思います。狭い密集地の中に、大きなビルディングから古い街並みまで過密に作られ、そこに集う人の数もマンモス級の巨大都市ニューヨーク。旅先でホテルに泊まるにしても、世界屈指の狭さと値段の高さを誇るこの街にて、老夫婦アレックスとその妻ルースがブルックリンで古くから住む家は今では高級住宅に数えられる眺めのいいアパートメント。若きときからそこに生き、街の人々とも一体化した生活スタイルは、彼らが住むアパートメントの空間ととってもマッチしているのです。街と家と、そしてそこに住む人が一体になっており、そこに生活という旋律が軽やかに響いている。主演俳優2人の軽妙な演技が、そんなそこにあるお洒落な日常を自然に表現しているのです。

しかし、日に日に老化している彼らにとって、エレベータもなく、上階までの移動は難点そのもの。決死の覚悟で売るためのオープンハウスを企画するものの、売りたいような売りなくないような、、という彼らの心は気もそぞろ。彼らは果たして家の売ることができるのか、、、という結論は本編を見ていただくとして(笑)、僕はこの映画、そんな家を売るというところの物語は、最初からどうでもいいように作っているなと思ってみていました。この映画で描きたいのは、「ドリームホーム」では否定してされていた家という存在が、”されど家”ということになると思うのです。やはり持ち家であって、賃貸であっても、(生家は別にして)その人が選んだ家というのは、やはりその人を否が応でも体現している存在なんだということ。人生の大半を過ごす家という存在は、やはり人の生活の中でも(当たり前ですが)切っても切れない関係にあり、家の存在で彩られていく人生というのもあるんだなーとジンワリと感じることができるのです。こんなアパートメント、こんな街に是非暮らしていきたいなーと感じる人もきっと多いと思います。

本作を見ると、長年住んでいる家でもきちんと整理したり、模様替えをしたりということを、久々にしたいなーと思わせる作品になっています。

次回レビュー予定は、「ディーパンの闘い」です。

『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』:家と人の人生はうまく回っていくと、人生そのものが楽しくなることを素直に描いている作品” への1件のフィードバック

コメントを残す