『人生は小説よりも奇なり』:作品の雰囲気はいいが、テーマがあまりにボンヤリ過ぎる。。

人生は小説よりも奇なり

「人生は小説よりも奇なり」を観ました。

評価:★☆

ニューヨークを舞台に、長年連れ添ったカップルが結婚を機に巻き込まれる悲喜こもごもを描いた作品。ちょうど今年同じような内容に加え、長年住んだ家を売るというイベントを盛り込んだ「ニューヨーク、眺めのいい部屋売ります」という良作がありましたが、本作は家を売るのではなく、家を失ってしまうというところが違うのと、長年連れ添った夫婦ではなく、長年連れ添ったゲイカップルが結婚していくというところが少々違ってきます。それでもニューヨークのお洒落な空気感は同様のところがあって、観ていて気持ちのよくなる作品に仕上がっています。

という出だしにしたものの、同じような雰囲気を醸しながら、本作はすごく内容が薄い気がします。ゲイカップルが結婚というイベントをきっかけにすることで、単純に一組のカップルが結ばれるという幸せムードとは裏腹に、ゲイで結婚をしてしまったことで稼ぎ頭だった音楽教師ジョージは教師という職を失ってしまう。画家として活躍してきたものの、既に引退モードに入っている結婚相手のベンに収入を期待する望みもなく、2人は結婚早々にホームレスになってしまう。家族や仲間の助けで居候はするものの、結婚したのに逆に離れて住まないといけなくなる。この事実があるのみで、後のドラマはすごくノッペリと長閑に進んでしまっているように思うのです。

結局観ていた感じたのは、本作は2人のカップルが寄り添いながら、周囲との楽し哀しの人間ドラマを描きたいのではなく、2011年にニューヨークで合法化された同性婚に関わる問題を提起したいという、作品のパッケージからは感じ取れない社会派作品にしたかったのでは?ということを思いました。老後への漠然とした不安、それを払しょくしたいために結婚したのに、逆にその結婚が仇となってしまう現実。結婚したのに寄り添うことができない哀しさが、哀愁という作風で作品の随所に感じることができるのですが、ただ、これだと作品の題名とあっていないし、もっとヒリヒリとしたような感情剥き出しの演出を見たかったのも事実。どこかヒューマンドラマの甘さを残しつつ進めてしまったことが、作品の位置づけを中途半端にしたしまった感が拭えないかなーと思います。

次回レビュー予定は、「あやしい彼女」です。

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