『あやしい彼女』:盛り上がりは韓国版より少々欠けるが、日本版独自の持ち味が活きた作品!

あやしい彼女

「あやしい彼女」を観ました。

評価:★★☆

韓国映画「怪しい彼女」を「謝罪の王様」の水田伸生監督がリメイクした作品。僕はちょうど韓国映画版のほうもスクリーンで観ていますが、話の大筋は変わることはなかったです。73歳の元気婆ちゃん・瀬山カツが、ある日突然20歳に若返って起こる珍騒動を面白おかしく描いています。ジャパニーズ素っ頓狂な映像世界を生み出す水田監督の持ち味も十分に生きながら、単純なリメイク作の枠には収まらない興味深いデキの作品になっています。

話の大筋は韓国版と同じと書きましたが、主人公のキャラクターはだいぶ違います(笑)。韓国版で若返る女性オ・ドゥリも確かに豪快な性格は持ち合わせるものの、どこか昔ながらの清楚さが20歳に若返っていても残っていたのに対し、この日本版の瀬山カツというキャラクターはいい意味でガサツでダサダサなキャラクターになっています。なので、若返って綺麗な格好をしても、性格のガサツさはそのまま。若返りの前を演じた倍賞美津子も、若返った役を演じた多部未華子も、そのキャラクターをよく理解して演技の歩調をちゃんと合わせているところに役者魂を感じます。

それに本作で印象的な味わいを魅せるのが、カツの娘を演じた小林聡美でしょう。こちらもいい意味で、感情がストレートに表に出ない彼女の持ち味が、ガサツな母親カツと好対照な部分になっているところがいいのです。互いに反発しながら、カツの若返りによる一時喪失を経て、芯の部分では時代は違えど、同じシングルマザーとして必死に生きてきたことを終盤で認め合っていくのです。韓国映画版でも同じような描写があるのですが、音楽プロデューサーへの恋や孫への想いが中心だったのと、韓国版では母と息子と設定が違う部分があるので、本作のこの設定は日本版独自の持ち味だと思います。単身家庭や高齢化というところがより濃く出ている日本の大都市・東京だからこそ、この映画のテーマがじっくりと心にしみる部分でもあるのです。

しかしながら、カツが戦後の混乱期を必死で生き抜いてきたという、昭和歌謡的な設定が少々古臭いと感じるもの事実かも。コンサートシーンも韓国版に比べると、やや見栄えに欠ける部分があるのも少し残念なところです。

次回レビュー予定は、「マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章」です。

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