2017年劇場鑑賞映画ベスト10 【洋画編】

それでは、2017年劇場鑑賞映画ベスト10 【邦画編】に引き続いて、【洋画編】になだれ込むことにしましょう。今年は、この記事を書きながらの年越しになりそうです。

1位 50年後のボクたちは

本当は「ダンケルク」を1位にしようかと思ったのですが、それだと昨年1位の「サウルの息子」に続く戦争映画ということになってしまうので、暗いご時世をかっ飛ばしてくれる元気な本作を1位にしました。考えてみれば、小学校、中学校、高校、大学、そして社会人と、その時期ごとに僕には幸運なことに、本作のチックのような、自分1人だけだったら破れない殻に閉じこもっていたであろう状態から、外の世界を体験させてくれる友人・先輩・後輩が身近にいてくれたと思います。今は滅多に会うこともなくなってしまった、その友人たちに(自分の作品ではないですが、、汗)本作を捧げたい。そんな想いに素直にさせてくれる爽快青春映画です。少年少女の使い方が、ここ数年凄く上手いドイツ映画の傑作がまた1本登場しました。

2位 ダンケルク

本来なら圧倒的な形で、2017年を堂々と代表する一本だと思います。映画雑誌にとどまらず、哲学雑誌にも取り上げられる、哲学する監督ノーランは、本作で遂に神の眼の領域にまで達しているなと本当に思います。戦場という人の死が常にアチラコチラに存在している究極の状況で、そんな戦争という場に運命的にも集結することになってしまった各人の行動を、ダイナミックに時間軸を動かしながら、様々なカメラアングルで俯瞰しながら、その人たちの一挙手一投足を克明に捉えていきます。同時に、ノーラン監督が打ち出したいのが、戦争という馬鹿な行為をする人間でも、人の命を救いたいと自らの命をも惜しまないという人の美しさの部分。IMAXカメラが捉える圧巻な映像マジックも見ものな作品でした。

3位 ブレードランナー2049

もう今思い出しただけでも震えます。圧倒的な映像力と、浴びて感じることができるサウンドで展開される2049年のディストピア化した近未来を扱う本格SF。あくまで35年前に作られた「ブレードランナー」と本作とを1つ合わせたパッケージになっているからこそ、傑作たる由縁なのですが、この人造人間レプリカントに秘められることになる”記憶と虚構”の哀しさは、前作ではメタファー<暗喩>くらいでしかなかったのが、本作ではダイレクトに心に突き刺さる物語になっています。こうした”いとあわれ”とも評されるような世界観は、日本でいれば平家物語のような無常さすら感じ、ラストもどことなくKが散りゆく侍に思えてなりませんでした。順位以上に心に残る作品でした。

4位 LION ライオン 25年目のただいま

この映画の素晴らしいのは、予告編でも観てとれるような圧倒的なまでのロケーション力の凄さ。成長したサルーのオーストラリアもいいのですが、何と言っても胸に迫るのが前半部の幼いサルーがインドで兄とはぐれてしまう場面。インドの街中の喧騒と、そこに潜む子どもにとっての危険な匂いというのが、すごくダイナミックなカメラワークで描かれていきます。離れ離れになってしまった家族を探すツールとして、GoogleEarthが出てきますが、そんなITよりも人が住む世界がすごく広大で果てないことが映像からも実感できるし、だからこそ人をつなぐことができるITの力強さも感じる作品。とにかくスクリーン映えする作品です。

5位 不都合な真実2 放置された地球

4位の「LION」ではオーストラリアやインドなどのダイナミックな映像で、私たちの住む地球の中で私たちが如何に小さな存在かを知らされましたが、本作では逆に、その人間が地球を蝕んでいることを如実に描き出してくれます。「不都合な真実」で行った温暖化に対する警告だけではなく、ゲリラ豪雨や爆弾低気圧など、私たちの身近で深刻な事態が起こっていることが分かるようになってきた今、次世代にどういう形で、この素晴らしい地球を受け継いでいかないといけないのか。それを本作に登場してくる人は真剣に考え尽くしているのです。余談ですが、ゴア氏の熱烈な活動とは対象的に、アメリカ・ファーストしか言わない現トランプ政権を見ると、フランスやドイツ等の欧州諸国に比べても(国力とは別にして)、すごく小国になってしまったなということを最近感じます。日本人もそろそろアメリカ中心の思考から脱却していかないといけないのかもしれません。

6位 ローガン・ラッキー

大好きなソダーバーグ監督の4年ぶりの監督復帰作は、男臭さが充満した違った形の「オーシャンズ11」。運もツキにも見放されたダサダサのローガン兄弟が、完璧ともいえる強盗劇を七転八起しながら実行していくと、あら不思議、彼らの男臭さがすごくマッチョなカッコよさムンムンの男っぽさに変わっていくのです。バタバタながらもかっちりと決まっていく強盗劇も見事の一言。ローガン兄弟を支えるジミーをはじめ、周りのキャラの自然な協力もあって、彼らが輝いていくんですけどね。撮影にこだわるソダーバーグらしく、NASCARシーンも「カーズ」以上に迫力満点でした。

7位 カフェ・ソサイエティ

これも大好きなウディ・アレンが、1930年代のハリウッドとニューヨークを舞台にして撮りあげた作品。ここ数年は監督業のみに専念している彼ですが、もっともアレン映画らしいキャラクター、主人公ボビーに2人の魅惑的な女性ヴェロニカとの間の予想打にしない恋模様を描くロマンチック・コメディ。1930年代という黄金期のハリウッドと、今も昔も美しい街ニューヨークという映画映えする背景とともに、誰しもが持つ実らぬ恋の儚さと、遠く過ぎ去ったときに初めて感じる恋への淡い想いに、観ていてすごくうっとりとしてきてしまいます。多弁でまくし立てるジェシー・アイゼンバーグが、まさに現代のアレンといってふさわしい配役。一見華がないようで、会話で女性の心をときめかせるのもアレンらしいところです。

8位 おとなの事情

スマホがもはや単なる携帯電話ではなく、他人には見せることができないパーソナルツールになっている。ある月食の夜に集まった親友のカップル3組と一人の男が繰り広げる、互いのスマホを見せ合うゲームで始まった人生の悲喜劇。たった1つのアパートメントの中でしか繰り広げられないドラマでありながら、ここまでいろんなことが起こるのか、そして、それをドラマとしてみせることができるのか、、というくらいに、先が読めない展開にハラハラドキドキしてしまいます。人って、こんなにいろんな表情が見せられるのかというのも一つ驚きだったりするんですけどね。ただ、驚愕のラストは少しセコいと僕は今でも思っています(笑)。

9位 キングコング 髑髏島の巨神

いやー、もう楽しい作品です。もう怪獣映画です。モンスターいっぱい出てきます。人間たちが脱出しようと右往左往します。一部は、キングコングを目の敵にして、劇画ばりに対戦を挑みます、、、以上。というくらいに、ベスト10の十作品の中では一番中身のない作品です(笑)が、それだけ魅せることの面白さに特化した作品は稀有といってもいいのも確かなのです。何も考えずとも、ちゃんと面白さのツボさえ押さえていれば、後は話に多少な無理くり感があっても、ヘンテコな描写があっても気にならない。全てはキングコングを始めとしたモンスターたちが一掃してくれるから大丈夫。これもエンタテイメントの1つの形なのだと、ちゃんと主張してくれた快作です。

10位 素晴らしきかな、人生

世間的な評価はあまり高くない本作ですが、主人公ハワードだけではなく、人生の様々な局面に立った人々の一人一人に根ざした描き方をしているのがすごく好印象な作品です。ハワードの人生を変えることになる謎の3人が単なる仕掛け人なのか、それとも天使のような浮世離れしたキャラクターなのか、最後まで分からないのも、作品にファンタジックな色合いを上手く合わせこんでいると思います。生きている限り人生に終わりはない。例え、限りある人生であっても、その一瞬まで自分や人のためにどう生きることができるだろうと、考えさせてくれる良作になっています。

以上、洋画は結構上位の作品は下位の作品より抜け出ているかな(特に、トップ3までは)という、2017年の印象でした。今年は年末に映画感想文を結構貯めてしまって、それを消化しつつ過ごしていましたが、ベスト10を年内に書ききることはできませんでした。。2018年はサボらずに、2,3作品ストックくらいで映画感想文はしっかりとアップしていきます。2018年も、皆様にとってもいい一年でありますように。そして、多くの作品と映画館で出会えるようにしていきたいと願いつつ、2018年を迎えたいと思います。

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