『茅ヶ崎物語 MY LITTLE HOMETOWN』:桑田佳祐を生み出した茅ヶ崎を様々な角度から分析するブラタモリ風ドキュメンタリー。こういう形でもエンタテイメントできることに感心するとともに、ラストはお腹いっぱいな気分になれる!

茅ヶ崎物語

「茅ヶ崎物語 MY LITTLE HOMETOWN」を観ました。

評価:★★★★

茅ヶ崎出身で洋楽ポップスのプロモーター、そして日本一のレコードコレクターでもある宮治淳一。小中学校時代、桑田佳祐と同級生だったという宮治は“サザンオールスターズ”の名付け親としても知られている。数々の音楽人を輩出し、多くの文化人とも所縁の深い土地である茅ヶ崎の芸能史を自らの手で執筆・編纂するという作業を密かに始めていた宮治。そしてより多角的に茅ヶ崎を捉えていく上で、人類学者中沢新一に協力を依頼。中沢は自身のライフワークでもある“アースダイブ”という手法で、数万年規模というマクロの視点から茅ヶ崎の秘密を探っていく。茅ヶ崎をたどることで、桑田佳祐へと行き着き、さらにその先に日本人の心までも垣間見る二人。また、茅ヶ崎に縁の深い加山雄三へのインタビューを敢行、高校生時代の宮治の記憶をもとに撮影されたドラマパートでは、宮治にとって運命の分岐点となった“桑田とのある出来事”が描出される。茅ヶ崎出身のミュージシャン、桑田佳祐を核に“芸能の地、茅ヶ崎”の秘密を探る音楽探訪記。宮治淳一、中沢新一の2人が、監督を務めた「人狼ゲーム」の熊坂出と共に茅ヶ崎と芸能との関係性を多角的に分析したドキュメンタリー。

桑田佳祐を排出した茅ヶ崎には他にも加山雄三、尾崎紀世彦、古くは小津安二郎や山田耕筰も居を構えたこともある。そう茅ヶ崎はそうしたミュージシャン、アーティストが生まれ行く街なのだ、、ということを、ブラタモリばりに地形や歴史、民俗学などの様々なアプローチとして紐解きながら、同時に桑田佳祐というアーティストがどうやって生まれたかに迫るドキュメンタリーとなっています。後半部には、桑田がアーティストデビューとなった、ある高校の文化祭の一日を、本作を追っていく宮治淳一目線で迫った再現ドラマもついていて、そこには神木隆之介、野村周平、賀来賢人という今の若手の成長株を贅沢に使い、そして終盤では、いよいよあの人も登場してしまうという大変豪華な作品になっています。作品のテーマにもなっている、茅ヶ崎という土壌に迫ったアーティスト産出の要因みたいなところはかなりこじつけのような感じがやっぱりします(桑田が実際にそんなに祭りに関心がなかったみたいだし)。歌舞伎役者などの伝統芸能は別にして、やはりアーティストの才能が開花するというのに、今は地域性というよりは、その人の持って生まれた才能と育った周りの環境が左右するのは然りでしょう。しかし、意外にこのブラタモリ風ドキュメンタリーが面白いのです。

柳田国男の民俗学ではないですが、僕自身は日本独自の哲学や宗教は、元来日本人が持つ自然への畏怖の思い(アニミズム)が色濃く繁栄していて、それが海外では考えられない神仏習合という日本独自の宗教観が育ってきたと思っています。それはクリスマスやハロウィーンなどをいとも簡単に受け入れてしまう民族性もあるし、ジャパニメーションなどの日本独自の芸能スタイルを生み出す元にすらなっていると思っています。なので、あながちこの”茅ヶ崎=アーティストの産地”説は本当かも知れないと思えるほど、すごく興味深く観ていました。それに中沢新一氏の哲学観もとっても面白い。”アースダイブ”という言葉は始めて知りましたが、こういうブラタモリ的なところはすごく好きですし、ミュージシャン桑田佳祐を取り上げるのだから、是非ともタモリさんをコメンテーターに据えてほしかったと思うくらい。NHKは映画というエンタテイメントには手を出さないですが、こうしたブラタモリ風なエンタテイメントも映画という枠にしっかり収まると思いました(だからこそ、NHKさんも考えませんか??笑)。

後半のドラマパートはいい感じでスタートするのですが、無理くり前半のブラタモリ要素を入れようと思って多少崩壊気味になったのが残念。でも、最後の最後で素晴らしいオマケをつけてくれるので、映画作品としては十二分なお釣りを貰える作品になっています。

さて、本作で2017年鑑賞作品すべての感想文を書き終えました。次回は、年末恒例の2017年鑑賞映画ベスト10です。

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