『台北ストーリー』:急激な変化を遂げる街を背景に、変化を続ける一組のカップルの想い。背景対比は美しいが、もう少し作品にインパクトが欲しい。。

台北ストーリー

「台北ストーリー」を観ました。

評価:★★★

1980年代の台湾。高度経済成長の中、日に日に変貌を遂げていく台湾。家業を継いだ元リトルリーグのエース・アリョンと、幼馴染の恋人アジン。何となく付き合っている2人で、新しくお洒落なマンションに引っ越しをしようと考えていた。しかし、順調に進んでいたはずの二人の人生も、キャリアウーマンだったアジンの会社が買収にあったことから徐々に歯車が狂いだしてくる。アジンが上手くいかない毎日を、アリョンとともにアメリカに移住することで打開しようとするが。。「クー嶺街少年殺人事件」のエドワード・ヤンが1985年に手掛けた長篇第2作。主演・製作・共同脚本は、「黒衣の刺客」のホウ・シャオシェン。4Kデジタル修復され、2017年日本劇場初公開となります。

今年は「クー嶺街少年殺人事件」、それに絡んだ「ヤンヤン 夏の想い出」のリバイバル上映の鑑賞と、エドワード・ヤン監督の作品を見返しています。彼の短い人生の中で手がけた作品というのも僅かなのですが、今までの2作品と違って、本作はどこにでもありそうな都会人カップルを追っていくという形のドラマになっています。それでも「クー嶺街少年殺人事件」と同じく、日本から遅れてやってきた台湾の高度経済成長の中で、街がどんどん都会化していくという経済の様が作品のバックグラウンドとして効いていると思います。都会化というのは、人の心にとっては繁栄していく街並みとは真逆にどこか空虚になっていくものですが、こんがらがっていくアリョンとアジンの周りの人間関係に対し、2人の間にはどんどん距離が出てくる様にそれがうまく投影されていると思うのです。

とはいうものの、今まで見た二作品と少し違って、本作は登場人物が少なく、シンプルな分だけ、どこか普通なカップルの物語を取り出しているだけという印象がないわけでもありません。作品序盤の2人の関係と、映画終盤の冷めきった中でもお互いを求め続ける矛盾した想い、それと街の急激な変化が上手く対比されている分だけ、何かインパクトがあるようなドラマ劇を観たかったような気もします。

次回レビュー予定は、「エイリアン コヴェナント」です。

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