『野良犬 (4K上映)』:三船敏郎の若きギラギラ感が出た刑事もの!印象的なシーンを作る黒澤監督の画力に驚かされる!

野良犬

「野良犬 (4K上映)」を観ました。

評価:★★★☆

刑事の村上は射撃訓練を終え、混雑したバスに乗り込んだところ、所持している拳銃が何者かに盗まれた。周囲にいた怪しい男を追いかけたが、残念ながら、その姿を見失ってしまう。彼は警視庁に戻ると、上長である捜査一課長に報告するものの、処分が下るまでじっとしてはおられず、自ら犯人の足取りを追うことを決意する。スリ係の老刑事・市川に相談すると、同じバスの中にいたと思われるスリの常習犯・お銀が捜査線上に浮かび上がる。村上の詰問を最初は邪険にしていたお銀だが、彼の執拗な捜査に観念し、貸ピストル屋の存在を漠然と知らせれくれた。服をボロボロにしながらも、執念の捜査を続ける村上の前にやがて犯人の糸口が見つかってくるのだが。。「不良少女(1949)」「風の子」の本木莊二郎の製作で、黒澤明監督自身の原作を新人菊島隆三が脚色した作品。

黒澤監督の名作をスクリーンで見ようという活動を昨年もしていて(昨年は「生きる」「七人の侍」を鑑賞)、今年の「午前10時の映画祭」で行われている4K上映の作品を鑑賞。本作の製作が1949年ということなので、黒澤監督の作品としては初期のものですが、まだ若き三船敏郎が若き刑事・村上を、志村喬がベテラン刑事・佐藤を演じているなど、黒澤作品ではお馴染みのメンバーも出演していて、何となく安心感を感じます。その中でもやっぱりいいのは、「七人の侍」や「椿三十郎」などで輝く三船敏郎の若き頃のギラギラ感が前面に出ていることでしょうか。「七人の侍」くらいになると男の汗が似合うギラついた男というイメージが出てくるのですが、まだ本作くらいはまだ酸いも甘いも知らない若き魂みたいなところがあって、それが「野良犬」という題名よろしく、戦後のバラックな街中を縦横無尽に歩き回っていく姿がカッコいいのです。

そうした若き刑事の捜査を中心とした前半部は、戦後復興の闇市の中を実際にカメラを回しながら撮ったといわれるだけあって、埃っぽい街中の喧騒がリアルにスクリーンから伝わってきます。そして後半部では志村喬演じるベテラン刑事・佐藤とともに、コンビで捜査を進めていくのですが、闇市のシーンも含め、捜査の舞台になる背景がとにかく美しい。お銀を追って街中を動き回るシーンなど、長回しではないものの、まるでデ・パルマの「スネークアイズ」のような、引きで二人の動きをダイナミックで追っていくさまが凄いの一言。中盤にある野球場での熱気や、ラストで犯人の一歩手前まで迫る佐藤刑事と犯人が対峙する土砂降りのシーン、そして終盤で犯人を捉える村上のシーンなど、スクリーン映えするというか、この感想文を書いている段階でもリアルに、その映像シーンが思い出されるくらいなのです。もちろん白黒の映画なのですが、「七人の侍」でもあった画力で、シーンそのものを脳裏にいつまでも焼き付けることができる黒澤監督の力量に改めて驚かされました。

次回レビュー予定は、「あゝ、荒野 前編」です。

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