『シェイプ・オブ・ウォーター』:ギレルモ・デル・トロ流の逆人魚姫伝説。映画の各要素はとても素晴らしいのだが、肝心のロマンスにイマイチ納得感が。。

シェイプ・オブ・ウォーター

「シェイプ・オブ・ウォーター」を観ました。

評価:★★★☆

1962年、ソ連との冷戦下のアメリカ。声を出せないイライザは政府の極秘研究所で清掃員として勤務していた。毎日の生活の慎ましやかなもので、自分のことをフォローしてくれる同僚のイライザや、優しく接してくれる隣人のジャイルズとの交流が心の支えだった。そんなある日、研究所にアマゾンで神と崇められていた不思議な生きものが運び込まれる。極秘裏に進められていた、その謎の生物の実験を目撃したイライザは、その生きものの姿に魅了される。イライザは子どもの頃のトラウマから声を出せなくなっていたが、声を発しないその生きものとの交流に声は必要なかった。2人の心は通い始めるが、やがて彼がある実験の犠牲になることを知る。。「パシフィック・リム」のギレルモ・デル・トロによる、第74回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞及び第90回米アカデミー賞作品賞受賞のファンタジー・ロマンス作品。

海で溺れた王子を救った人魚が、その王子と恋に落ちるという人魚姫伝説。その性別や立場の設定を逆にして、人魚をデル・トロの崇拝する怪獣に置き換えたのが本作。それも単なる怪獣映画、ロマンス映画の枠に収まらず、ミュージカルっぽくなるところや、エロチックな描写もふんだんに盛り込むなど、1つの作品でいろいろな映画の要素を楽しめる玉手箱的な作品になっています。アカデミー賞受賞作品ということで、確かに力のこもったデル・トロの代表作にふさわしいとは思うのですが、どうも映画としてウケ売りが良さそうな作品に仕立てたと感じざるを得ないところもあったりと、評価が自分の中では微妙な作品でした。それに核となる、イライザと怪獣とのロマンスそのものがまず理解できない。デル・トロ的には「美女と野獣」の変形版ということらしいのですが、あの作品はちょっと究極的なストックホルム症候群(閉鎖環境に追い込まれた状況)っぽい恋というところもあって、相手が獣だろうが関係ないのも理解できなくはないのですけど、本作はなぜあんな怪物に、、、と思ってしまうのです(笑)。

まぁ、それをド返しすれば、映画としては高評価できる部分が満載です。冒頭からVFXを巧みに利用し、「パンズ・ラビリンス」でも魅せたゴシック調な様式美と水の表現も巧みだし、怪物そのものの姿も美しいの一言。それ以上に僕はいいなと思うのは、映画のサントラでしょうかね。見終わった後に、早速AppleMusicからDLして聞いていますが、これがすごく世界観を表現しつくしていて、もう最高なのです。「パディントン」シリーズでも好演を魅せているイライザ役のサリー・ホーキンスはまさに今が売出し中の熱血演技(なんせ、声を全く発しないのですから)だし、「ドリームホーム」「ハンズ・オブ・ラブ」と脇を固める俳優として力をつけているマイケル・シャノンは、本作で1つ華が咲いたかなと思う演技力です。

近年、アカデミー賞受賞作品の僕の評価はちょっと辛めなのですが、本作も同じようになったしまったかなと思います。今年なら総合的には本作ですが、同じレースをしていた「スリー・ビルボード」のほうが作品としては力があったかなと感じました。

次回レビュー予定は、「ドラえもん のび太の宝島」です。

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