『64 後編』:事件の解明劇はハラハラするが、前編とのつながりがイマイチしっくりとこない。。

64 後編

「64 後編」を観ました。

評価:★★☆

横山秀夫のベストセラーを「ヘヴンズ ストーリー」の瀬々敬久が2部作で映画化した後編。昭和64年に発生した未解決の少女誘拐殺人事件・通称“ロクヨン”から14年後、新たな誘拐事件が発生してしまう。現在は広報担当であるが、当時捜査にあたった刑事・三上は再び事件の解明のために、動き出すこととなる……。前編では事件というより、警察という官僚組織の中のシマ争いと、警察と報道という対立軸を舞台に人間ドラマが展開していき、それはそれで見ものではあったのですが、肝心な事件はどこかおざなり感がなくはなかったです。後編では、そうした前編のおざなり感を、14年を経て起こった模倣事件をキーに、事件解明と動いていく流れになります。

と話を持ってきた後になんですが、最近の邦画は本作のような2部作品の展開をしていくことが多いです。近年では「のだめカンタービレ」や、今年に入った「ちはやふる」などのように数巻に及ぶコミック原作をもつ作品は、その背景をしっかりと描くだけで長尺になるので、腹を割って2部作品にすることが1つの例としてあります。もう1つの形が本作のように原作小説自体が前後編構成になっているようなもので、これは結構素直に分かりやすく、2部作品仕立てにしてしまうということもあるかなと思います(近年では、「ソロモンの偽証」など)。こうした2部作品に共通したつくり方として、やはり前編と後編の色合いをだいぶ変える工夫をしているということ。同じテンポで引っ張ってしまうと時間を置いただけ、ファンの心持ちというのを一旦冷ましてしまうので、もう一度食いつかせるために違う視点、違う舞台、同じストーリーでもフォーカスをずらして、同じ物語の延長でも、違うテイストを楽しめるような努力をどの作品もしていると思います。これは単純に2つに分けるということではないというだけに、結構凄いことをどの作品もしていると思うのです。

で、翻ってみて本作ですが、冒頭に触れた通り、前編は官僚ドラマ、後編は事件本流の解明を通じたミステリーというところで、うまく2部作としての味を変えられていると思います。、、が、肝心なところで、この後編に描かれる事件の解明が、前編の緊迫した組織劇と微妙に合っていないように思うのです。事件そのものは解明しようと努力する遺族や、当時の捜査官たちの熱意というのは至るところで感じることができるし、逆に、組織の板挟みから悲劇が起こり、それが連鎖して14年経った現在への模倣事件へと繋がるのですが、ここへのつながりというか、カタルシスが感じられないのです。真犯人、そして模倣事件の犯人があっさりと登場してしまうのも、何だか個人的には物足りなく感じるし、前編であれだけ緊迫した人間ドラマを見せた報道陣との対立も、後半の事件報道に上手くつながっていないように見えます。後編単品での面白さは感じますが、前後編に分けたところのつながりをしっかりと描くことができていないように感じる鑑賞でした。

次回レビュー予定は、「日本で一番悪い奴ら」です。

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