『ロープ/戦場の生命線』:汚染された水を守るためにロープを探す国境なき水管理団。戦闘状態と日常の狭間で働いている人に感服してしまう作品!

ロープ/戦場の生命線

「ロープ/戦場の生命線」を観ました。

評価:★★★☆

1995年、停戦直後のバルカン半島。ある村の井戸に犯罪組織が死体を投げ込んだ。そのために井戸が汚染され、その村の生活用水が使えないという被害にあっていた。そうして水を使えなくすることで、貴重になった水を不法に密売しようと組織は企んでいたのだ。国籍も年齢も異なる”国境なき水と衛生管理団”の5人は、何とか水を確保するために死体にロープをかけて引き上げようとするが、腐乱が進んで膨らんだ死体にロープが耐えきれず切れて使えなくなってしまった。より丈夫なロープを求め、彼らは地雷や武装集団が今もそこら中にいる危険地帯をさまよっていく。。国境なき医師団に所属するパウラ・ファリス原作、ベニチオ・デル・トロらのアンサンブルで国際援助活動家の活動を描写した人間ドラマ。ドキュメンタリーも手がけるフェルナンド・レオン・デ・アラノア監督が、紛争直後のバルカン半島を背景に危険に身をさらす活動家たちの日常をユーモアを交えながら描き、第30回ゴヤ賞にて最優秀脚色賞を受賞した作品。

ちょっと変わった作品ですが、ジャンル的には戦争映画に分類されるかなと思います。ただし、(ネタバレになるかもですが)銃撃や戦闘シーンはあまり出てこない、いわゆる銃後の戦争を描いた作品といえます。こうしたタイプの作品は日本映画だと、「少年H」や黒木和雄監督の「美しい夏 キリシマ」や「父と暮せば」など思いつくのですが、あまり海外作品で印象に残るもの(まぁ、古くは「カサブランカ」とか、最近だと「マリアンヌ」や先日観た「ローズの秘密の頁」とかあるといえばあるのですが、ラブロマンスばかりの印象)がなかったかなと思います。その意味で、停戦が行われたものの、何が導火線に火がつくと戦闘が起こるような緊張感が作品全体に漂っているのはなかなかだと感じました。

こうした戦争映画ではあるものの、死や緊張感で作品が暗くならないような人情やユーモアにあふれているのがいいですね。「ライフ・イズ・ビューティフル」のようなコメディではなく、あくまで日常私たちが面倒な仕事でも、やれやれと悪態をつきながら仲間と楽しく片していくような日常と戦場がおかしくオーバーラップしていく様が、なんとなく面白いのです。そんな悪態をつくキャラクターに、デル・トロはまさにうってつけ(笑)。同僚を演じるティム・ロビンスも含めて、彼らの姿を久々にスクリーンで観れたのも、映画ファンとしては何だか嬉しいです。

ただ、観ていて、日本人としては自衛隊のPKO活動や、国境なき医師団、青年海外協力隊など危険な地域で活躍している人の姿も少し思い起こされます。本作で描かれるような、停戦中とはいいながら、そこらかしこですぐ戦闘状態に移行してしまうような緊張状態の中で、仕事をされていることを思うと頭が下がるのです。同時に、特に自衛隊をこうした危険地域に派遣する意味があるのか、、法律として未整備な新安保法案が通って久しいですが、(憲法改正どうこうの前に)常にこうした安全保障体制の議論はしていかないといけないと感じた鑑賞となりました。

次回レビュー予定は、「ベロニカとの記憶」です。

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