『ベロニカとの記憶』:親友の日記を鍵に紐解かれる若き日の恋の真実。誰しも青春時代の記憶は、都合よく書き換えられるもの。。

ベロニカとの記憶

「ベロニカとの記憶」を観ました。

評価:★★

趣味の小さなカメラ店を手慰みにしながら、引退生活を送るトニー。彼の元に、弁護士から一通の手紙が届く。それによると、40年前の初恋の人・ベロニカの母親がトニーに日記を遺しているという。その日記はトニーの学生時代の親友のものだった。まもなくベロニカと再会したトニーは、若くして自殺した親友、初恋の秘密など長い間忘れていた青春時代の記憶そのものが揺らいでくるのだった。過去の謎が明らかになったとき、トニーは人生の真実を知るのだった。。英国ブッカー賞受賞小説『終わりの感覚』を「めぐり逢わせのお弁当」のリテーシュ・バトラが監督したミステリードラマ。

如何にも英国らしいお洒落な恋愛ミステリーとなっています。年をとっても若い青春時代の記憶というのは確かなもの、、と思っているはずなのですが、誰しも自分の青春時代は輝かしかったものにしがち。本作で描かれるような、親友の死という紛れもない事実は事実として捉えられるものの、とかく恋愛がどうだったとか、友情はどうだったとかは自分のよかったように、記憶をデフォルメしてしまうものなのです。なので、同窓会等々で昔の仲間に出会ったときに、「あのときああだったよな・・・」という会話が妙に噛み合わないとき、自分が記憶していた想いとは違うドラマが進行していたりする。本作は、そうした都合の良い記憶が生み出した物語なのです。

イギリスらしいハリー・ポッター風な学園ドラマや、ロンドンの光景、パブに集う仲間たちなど、つい先日観た「ロスト・イン・パリ」が憧れのパリを美しく描いていたように、本作も僕たちの思うイギリスらしい風景や空気感に魅了されます。ただ、そこに描かれる恋愛ミステリーというのは、まぁ、そんなお話なのね、、と思うレベルで、すごいパワフルな物語や脚本構成が巧みで関心するといった要素はあまりない感じ。「めぐり逢わせのお弁当」の監督さんらしい、街角の雑踏感を捉えるカメラワークなり、ラストでのあるキャラクターの眼差しや仕草が、ミステリー要素の鍵になっているようなシークエンスの描き方はなかなかと思いますが、映画として突出しているという感じまではいってないように思います。この読了感は、同じく先日見た「ローズと秘密の頁」によく似ているんですよね。可もなく不可もない感じの評価になってしまいます。。

次回レビュー予定は、「サニー」です。

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