『ローズの秘密の頁』:精神病施設に半世紀収監された女性を巡る大河ラブロマンス。シェリダンらしい確実な人物描写は魅力だが、お話が思ったほど拡がらなかったように思う。。

ローズの秘密の頁

「ローズの秘密の頁」を観ました。

評価:★★

取り壊しが決まった西アイルランドにある精神科療養施設。転院する患者たちのために再診をするべく訪れた精神科医のグリーンは、赤ん坊殺しの罪で精神病患者として40年間収容されている老女ローズ・F・クレアと出会う。罪を否認し、「ローズ・マクナリティ」と自分のことを訴え続けるローズに、他の患者と違う点を感じたグリーンは早速彼女の診断を始めていく。そこでグリーンは彼女が密かに大事に持っている聖書に、彼女の封印されてきた過去が綴られていたことを知る。その内容を紐解いていくと、そこには彼女が半世紀に渡って抱えてきた驚くべき真実が隠されていた。。アイルランドの作家セバスチャン・バリーによる小説を、「ドリームハウス」のジム・シェリダン監督が映画化した作品。

精神療養施設に収監されている心に闇を抱えた女性を巡る、半世紀に渡る大河ロマンス作品。観に行ったのに、そんなこと言うなよという感じかもしれないですが、ちょっとありがちな形な作品かなと思いました。主人公となる女性ローズには傍目には分からない恋物語があり、それを妬んだある男性によって数奇な運命に翻弄されていくという形(ちょっと、ネタバレちっくかもしれませんが汗)。誰しも人に恋い焦がれたときはそうかもしれないですが、その恋が成就しればよいけど、何か一方的な片想いで終わったとき、そこに諦める気持ちが生まれればいいのですが、相手が自分とは全く正反対な相手に心行ったときに嫉妬心に変わってしまうともう厄介。一度は恋した相手なのに、その相手の幸せに水を指すようなこと(本作では、相手の人生をも貶めるようなことになってしまう悲劇に発展するのですが)をしてしまうのだから、人間はすごく罪深い生き物だなと思います。

もう、恋破れたときは、その相手の顔を見ることがないように遠く離れてしまうのがいいですね。寝る前にちょっと思い出すくらい、、そんな距離感まで遠くに逃げちゃえば、自分自身も罪を犯すことがないよう防御策が張れると思います。本作で、その罪を犯したある人物は、その罪自体を一生背負っていく覚悟だ、、みたいな一見良いことをいいますが、それでローズは半世紀もの人生を棒に振ってしまうのだからたまったものじゃない。まぁ、そんな描写もしなければ、映画作品にはならないんでしょうけどね(笑)。

全体的にジム・シェリダンらしい、地に足のついた人物描写がしっかりとしているところは好印象です。朽ち果てた現代の療養施設の描写や、予告編でも垣間見れるローズが恋した相手が戦闘機で海岸線に帰ってくるシーンなどはスクリーン映えする描写力の確かさを感じることはできます。ただ、僕の好みとすれば、「父の祈りを」や「ボクサー」のような少し荒々しさをも感じられる男っぽいシェリダン節を観たいなと思ったところです。

次回レビュー予定は、「犬猿」です。

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