『今夜、ロマンス劇場で』:白黒映画の女王様がスクリーンのこちら側にやってくる恋愛コメディ。古臭い設定がやや難だが、主演2人の演技の高さに脱帽した!

今夜、ロマンス劇場で

「今夜、ロマンス劇場で」を観ました。

評価:★★★★

いつか映画監督になることを夢見る健司は、撮影所で助監督をして修行中だが、ドジばかりするうだつの上がらない青年だった。しかし、映画に対する愛情は人一倍。賑わいを見せる通い慣れた映画館で、全ての上映が終了後、古いある一本の映画を観るのが唯一の楽しみだった。そんなある日、その古い映画に登場していた憧れのお姫様・美雪が、スクリーンから飛び出して現実世界に現れる。白黒の古い作品のままの彼女の存在を隠すため、健司は右往左往させられるが、二人は次第に惹かれ合っていく。しかし、美雪にはある秘密があったのだった。。「信長協奏曲」の宇山佳佑によるオリジナル脚本を、「テルマエ・ロマエ」シリーズの武内英樹が監督したラブ・ストーリー。

最初、本作の予告編を観たとき、少し前の作品ですが、ゲイリー・ロス監督が1998年に撮りあげた「カラー・オブ・ハート」を思い出しました。だけど、あの作品は現代を生きる若者が、懐かしの50年代の白黒テレビドラマ(映画ではなかったはず)の世界に入り込んで、その世界を崩壊させてしまうというお話でしたが、本作はどちらかというと、ジョン・マクティアマン監督&シュワルツネッガー主演の1993年作品「ラスト・アクション・ヒーロー」(映画の世界のアクション・ヒーローが、現実社会に飛び出してくるという話)に近いようにも思えてきます。まぁ、両作品のいいとこ取りをしたようなお話。その意味では、どこか懐かしさすら感じるのは、この例のように少し前によく使われていた映画のエッセンスが作品の至るところに感じるからだと思います。

それよりも本作で僕が驚いたのは、健司を演じた坂口健太郎の演技力の高さ。昨年(2017年)に見させていただいた「君と100回目の恋」では、少し主演を張るには線が細いかなという印象が拭えなかったのですが、本作では綾瀬はるかというビッグネームを上手く支えながら、ドジでおっちょこちょいな三枚目的な一面も見せながら、映画に対する想いはとことん真摯で芯が強いキャラクターを好演していると思います。本作よりはまだ脇役であった「俺物語!!」でもそうでしたが、柔和な笑顔でどこか抜けている三枚目と、ときより見せる男っぽいカッコよさを並行させていく難しいキャラクター像が得意な役者さんなんだと、本作で改めて認識しました。それにスクリーンから飛び出すお姫様役の綾瀬はるかが、映画主役としての華がすごくある。細かな演技が上手いというわけではないのですが、スクリーン全面出るだけでそうした色気を感じるのが、彼女の天性なのだとこちらも改めて感心しました。

そうした主演2人の演技が映えるいい作品ではあるのですが、本作で唯一弱点だと思うのが、ちょっと作品が古臭いなと感じるところ。お話自体は現代からの回想形式で始まっていくのですが、「蒲田行進曲」ばりの映画全盛期の50〜60年代の日本映画の雰囲気なり、その前の戦前の和風ファンタジック・トーキー映画など、オールド映画ファンには懐かしいようなノスタルジックな再現光景はいいのですが、これが例えば、綾瀬はるかファン層の若者たちにウケるかというと微妙なところ。ただ、作品はファンタジックで素晴らしいので、食わず嫌いの先入観を持たずに観たほうがいい作品だと思います。

次回レビュー予定は、「ローズの秘密の頁」です。

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