『ニュースの真相』:ジャーナリズムと真正面から向き合うドラマの姿勢はなかなかだが、結末が負け戦と分かって観るのはちと辛い。。

ニュースの真相

「ニュースの真相」を観ました。

評価:★★★

2004年、米国最大のネットワークを誇る放送局CBSは、伝説的ジャーナリストのダン・ラザーが司会を務める看板番組でブッシュ大統領の軍歴詐欺疑惑を裏付けるスクープを報道する。大統領選挙を前にして、アメリカ中がそのニュースに釘付けになるが、その証拠は偽造されたものだと指摘されることで事態は一変していくことになる……。CBSのニュース番組をプロデューサーとして長年手がけたメアリー・メイプスの自伝を原作に、「ゾディアック」「アメイジング・スパイダーマン」などの脚本家ジェームズ・ヴァンダービルトが映画化した作品。ヴァンダービルドにとっては初監督作品となります。

アメリカ、ジョージ・W・ブッシュ元大統領は9.11テロを機に、アフガニスタン侵攻やイラク戦争など、どうしてもテロや戦争という世界的な脅威を知らしめた大統領として今では多くの人が認識していると思います。その大統領選もいろいろ物議を醸し出したことでも記憶されています。民主党候補、ゴア元副大統領との一騎打ちとなった2000年の選挙戦では、フロリダ州での票読み取りに問題があったとして法廷闘争まで展開された上の薄氷の勝利となり、本作の舞台となっている2004年の大統領選では民主党候補、ジョン・ケリーとの戦いでも、同じような票の読み取り問題もありましたが、選挙戦で両候補での経歴詐称疑惑が出るというスキャンダル合戦も繰り広げられ、(日本から見た目には)グタグタの選挙戦となった印象があります。本作は、その中でも特に世間から注目された、ブッシュ元大統領の軍歴における詐称問題の顛末を描いています。

映画を観る前の段階で、2004年の状況は詳しくは知らないものの、結局ブッシュ元大統領が勝利し、大統領二期目を勤め上げたということを知っているだけに、この詐称を巡るドラマは”負け戦”であるということは分かっていること。いくらジャーナリズムの意義とか、ケイト・ブランシェットとロバート・レッドフォードによる玄人好みな演技を味わえていても、ドラマとしては結末が分かった状態で観ていくのは少々厳しいものがありました。何か大きな敵と戦っていることは分かっても、結局、この”負け戦”の背後にある何かを大きく渦巻いているものの陰謀みたいのを描き出さないと、お話としての面白みは多少欠けるかと思います。同じジャーナリズムを描いていても、「スポットライト 世紀のスクープ」ではジャーナリズムが正義の鉄槌をくだせた所に胸のすくところがあるのに対し、本作は陰謀ほど事件の背後は大きくならず、かつ結末に大きなサプライズがないので、同じジャーナリズム映画としては少し劣ってしまうように感じるのです。これが物事が解決しなくても、何かしら何が正しいのか分からないという空気を出せば、オリバー・ストーンの「JFK」のような真実は闇の向こうという描き方にもできたと思うので、非常に残念です。

とはいうものの、一流役者陣の大人な演技はなかなか。”火のないところに煙は立たない”という信念で、最後まで真実を追い求めるメアリーの姿には、敗将ながらアッパレといったところでしょうか。

次回レビュー予定は、「ジャングル・ブック」です。

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