『ズートピア』:単純に面白さが詰まった作品ではあるが、設定があまりにリアル過ぎないか!?

ズートピア

「ズートピア」を観ました。

評価:★★★☆

2Dの日本語吹替え版にて。

動物たちが生活するズートピア。ここで正義感に溢れ、身の丈に合わない警官の夢を実現させた新米警官のウサギ・ジュディと詐欺師のキツネ・ニックが、ズートピアの危機に立ち向かう冒険アニメ。監督は「塔の上のラプンツェル」のバイロン・ハワードと「シュガー・ラッシュ」のリッチ・ムーアが務めています。

僕が観た回も異様に混んでいましたが、巷では口コミで人気が広がっているアニメ映画となります。本作はディズニースタジオの作品になるのですが、「アーロと少年」の感想文に触れたとおり、「トイ・ストーリー」などの人気作を生み出した元ピクサーのジョン・ラセターがディズニーに移ってからの、ディズニー・アニメは本当に復活しましたね。僕が映画をよく見るようになった頃の、ディズニーアニメの印象といえば、王道のストーリーラインを行く主人公がいて、その周りにいつもワーワーと騒ぐサブキャラクターがいるという形が定番で、古き良きお話を掘り起こしてはアニメ化をしていくという形で、アニメテクノロジーは新しいものを導入するものの、作品の斬新さというのは希薄なものが多かったです(「ターザン」や「ムーラン」などのいい作品もありましたけどね)。ところがラセターがピクサーで実現させたお話をよりクリエイティブに作っていく手法を取り入れ、従来のディズニースタイルに固執しなくなってからは、映画の中に登場するキャラクターがより活き活きとしてきたように思います。まぁ、悪くいっちゃえば、ピクサー風になってきたともいえなくはないですが、2014年の「アナと雪の女王」のようにディズニーのオールドスタイルと新しさをブレンドしてきたものもあらわれると、さすがディズニーとも思わざるを得なくなります。

本作の感想に戻ると、これもピクサーイズムがいい意味で感じられる快作だと思います。何よりも上手いのが、動物たちの楽園ズートピアが、まるでディズニーランドのような楽しいテーマパークのような設定になっているところ。実際の動物たちの自然での行動様式をよく分析し、居住空間を分けた世界観も、実際に人間のような形でデフォルメしたときの各動物たちの能力や、ズートピアでの街のサービスなども面白いものがあっていろいろ楽しい。本当にディズニーランドにこういう世界観を模したアトラクションができたら一日飽きないだろうなと思います。実は、こうした緻密な世界観の構築も、物語自身を面白くするための努力なのです。実際に住んだら楽しそうと共感できる世界じゃなければ、楽しい物語など作れるはずもない。こういう目に見える部分以外の努力を惜しまないのが、まさにピクサーでやられてたことなのです。

主人公となるジュディとニックのコンビも楽しいし、ズートピアを危機に陥れるところのミステリーとしての組み立て方もなかなか。ただ、楽しいズートピアではあるものの、あまりに扱うテーマがリアルすぎるところが個人的にはイマイチなように感じました。ズートピアに多くの動物たちが住むように、私たち人間も多様な考え方をもつ人が暮らして世界を共有しているということをメッセージとして伝えたいんでしょうが、それがせっかく楽しい作品に少し重くのしかかっているように思えてなりません。物語の中盤で主人公に大失敗をさせるという設定もいささか斬新ではありますが、作品のよいリズムにはつながってないように思えます。十二分に魅せる作品ではあるんですけどね。。

次回レビュー予定は、「ちはやふる 下の句」です。

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