『アーロと少年』:映像が印象的なシーンがいくつか見られるが、全体的な出来は平凡。。

アーロと少年

「アーロと少年」を観ました。

評価:★★☆

2Dの日本語吹替版にて。

「トイ・ストーリー」シリーズを生み出したピクサー・スタジオの2016年新作アニメーション。今度の舞台は恐竜が絶滅しなかった大昔。生きるために恐竜たちも狩猟中心から、農業などの酪農をし始めるようになり、知性をもつようになってくる。逆に、進化するはずだった人間を中心とした哺乳類たちは、恐竜たちからは知恵の遅れた野蛮な生物としか映らなくなっていた。そんな中、恐竜家族の中で落ちこぼれになり、ある日の事故で家から遠くはぐれてしまった末息子恐竜のアーロと、孤独に生きてきたが持ち前の器量と能力でたくましく生きてきた少年がひょんなことから出会い、アーロの家に帰る旅を描いていきます。

本作で魅力となっているのは、恐竜たちが生き残り、本来は台頭して来るはずだった人間が言葉を発しない野蛮な動物として描かれていることでしょう。恐竜たちが絶滅しなかったとしても、彼らが知性を持ち、逆に人間が知性を持たなくなったか、、というのは生物学的にあまりあり得ないようにも思うのですが、そういう細かいことは目をつむり、単純に素直に逆の立場になることの面白さは描けていると思います。特に、アーロが少年に家族の意味合いを教えるところなどは象徴的。アーロが能力が劣っていても家族には愛され、逆に少年は勇敢に生きる力は持っていても孤独であることが対称的になっているのです。ここでアーロの家族が如何に温かいものかを感じることができる。家族っていいな、、と単純に感じれる部分なのです。

それに3DCGのダイナミックな映像もいい。予告編にもなっている鳥の群れに2人(2匹?)が駆け抜けるシーンやホタルを追いかけるところ、そして中盤の恐竜たちの群れもスクリーンに映える迫力満点なシーンなのです。これは2D映像でも迫力十分。逆に、視野の狭くなる3D版(本作では3D公開劇場が極端に少ないですが)よりは、2D版で観たほうがいいかもしれません。ここはCG映画で引っ張ってきたピクサーの本領発揮というところでしょうか。

映像的には見どころがある作品ですが、ストーリーはここ数年のピクサー作品の中でも最も平凡な作品でしょうか。。見る前に予想していた展開に、これほど寸分違わない感じで進むのも久しぶりです。上記のような家族の愛を感じるところはあるものの、過去に「トイ・ストーリー3」や「ファインディング・ニモ」で感じた、物語のダイナミックな勢いみたいなものが全く感じられないのです。かつてのピクサーを牽引していたジョン・ラセターなどはディズニー・スタジオのほうに移っているので、ここ数年の作品はピクサー(本作や「インサイド・ヘッド」など)よりも、ディズニーが作る作品(「ベイマックス」など)のほうに力があるように思えるのは気のせいでしょうか。次作くらいにはピクサー本来の輝きを見たいものです。

次回レビュー予定は、「家族はつらいよ」です。

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