『中島みゆき 夜会Vol.18 橋の下のアルカディア劇場版』:歌はすごくダイレクトに胸に響くが、物語の展開部分とうまくつながっていない。。

中島みゆき 夜会Vol.18

「中島みゆき 夜会Vol.18 橋の下のアルカディア劇場版」を観ました。

評価:★★

中島みゆきが脚本・作詞・作曲・歌・主演を務める舞台『夜会 VOL.18「橋の下のアルカディア」』。2014年11月15日から12月16日まで赤坂ACTシアターで開催された公演の模様を5.1chサラウンドで上映する劇場版となるのが本作。中島みゆきのLIVEを公開する劇場版の試みは毎年行われていて、僕は一度も観たことがなかったのですが、本作で初めて鑑賞。映画感想文として上げるかどうかは微妙な作品ですが、映画館で観たということも踏まえ、感想文として一応残しておこうと思います。

中島みゆきというと、僕の中ではサザンと同じく、僕の両親たちの世代が特にオンタイムで聞いていたということがあります。小さい頃の記憶では、家の古い白のホンダ・アコードの車内カセットプレーヤーにはいつもかかっていて、覚えなくとも自然と、中島みゆきとサザンのメロディは頭の中に焼き付きながら育ったといっても過言ではありません。ジャンル的には70~80年代の曲というのはもう歌謡曲のオールディーズに含まれるのかもしれませんが、彼女の場合は今でも楽曲を定期的に作り、それもドラマやCMの曲としてタイアップされたり、他のアーティストに提供してヒットさせるなどアーティストとして進化し続けていることでしょうか。年齢以上のパワフルさやバイタリティを感じるのも、そうした活動を通じて第一線に立ち続けているからだと思います。

そんな今回の中島みゆきの劇場版は、コンサート映像ではなく、自身が製作した舞台劇を収録した作品。台詞がなく、ほとんど歌のみで進行していく作品ですが、ミュージカルというほど突き抜けた作品ではなく、あくまでベースとなっている歌は歌としてきちんと構成されたものになっています。劇のために歌が作られているというよりは、歌に紐づいて劇ができてきたといった様相になっています(実質の製作はどのようになっていたか分からないですが、既存のアルバム曲+書き下ろしという書き方になっていたのでそうなのかと)。だからかもしれないですが、普通のミュージカルに比べ、歌が劇的に物語を変えていくというパワーに欠けるのです。中島みゆきや中村中がアーティストとして歌は素晴らしいのはビンビン伝わるのですが、歌のボリュームと物語の展開力では前者が圧倒的に強くて、バランスを少し失っているように感じて仕方がなかったです。

その物語のほうもやや暗い感じのテーマになっているのも、やや気になりました。題名でもある『橋の下』を神格化していくように、昔のお話を挿入していくのは上手いのですが、上手い分だけ、今のお話の出口が相当重たい話になっているような気がしてなりません。おまけに、中島みゆきの歌であるので、歌詞の暗さで更に気分がめいってくるように思います。作品がそういうテーマである分は仕方がないのでしょうが、どこかに希望の光を感じる部分が欲しかったように思います。

次回レビュー予定は、「アーロと少年」です。

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