『ダウンサイズ』:世の中が全て小さくなれば、あなたも自然とリッチマン!? SF作品としては面白いが、少しテーマが高尚すぎるかも。。

ダウンサイズ

「ダウンサイズ」を観ました。

評価:★★★☆

近未来。ノルウェーの科学者によって、身体を13cmに縮める技術が開発され、地球規模に広がってきた人口問題を解決するべく人類縮小計画が持ち上がる。アメリカ、ネブラスカ州に住むサフラネック夫妻は、長年マイホームを持つことが夢だったが、堅実に生活をしていただけではなかなか貯金もたまらなかった。そんな彼らにとって、小型化になるだけで裕福に暮らせることに惹かれ、その決意するのだが。。「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」のアレクサンダー・ペイン監督による異色SFドラマ。

冒頭から、間の抜かしたような、それでいて大真面目に小型化の発見を力説してくる感じ、、嫌いじゃないです(笑)。異色SFの名にふさわしい本作は、世の中のスケールを小さくするだけで、単純にすべてのモノが小型サイズに済んで、エネルギーも今の人類サイズに比べれば相対的に小さくなる。それでこそ、中産や下級階級の人たちもリッチに過ごすことができる、、、というところに潜む悪魔の誘いにシニカルなドラマを潜ませる痛快作になっています。それでいて、例えば昨今のSNS社会の闇を描いた「ザ・サークル」のようなブラックファンタジーな感じの世界には引き込まない。どちらかというと、同じマット・デイモン主演の「エリジウム」に世界観は近いかなと思います。ただ、裕福な層が宇宙に住み、下層階級が地球に残った「エリジウム」と違い、こちらはお金に余裕がない中産階級以下が小型化という新世界に移住していくというのがちょっと視点が違っているのかなと感じます。

そもそも世界観とか、価値観は社会の中ではマジョリティ(多数派)の中で形成されます。宇宙人が襲来してくる映画はたくさんありますが、なぜ、私たちと同じサイズだと規定をそもそもするんでしょう。もしかしたら、蚊くらいのミクロなサイズの宇宙人がもっと地球にたくさん襲来しているのかもしれない。それを私たちは新種の生物として怖がっているだけなのかもしれない。ミクロなサイズで単純にすべてがダウンサイズされて、コストも小さく抑えられるというところだけしか目が行かないけれど、逆にミクロになったことでマクロな世界から働き手がいなくなり、その彼ら彼女らが担っていた仕事も、マクロな人間が請け負わないといけなくなるということも生じてきたりする(まぁ、人口過密という問題の上では、些細な問題かもしれないですが。笑)。それに単純な身体差をもって、今以上にマクロな人間が世界を支配しよう(階級差をつけよう)と行動したりもする。すべては紙の上で計算できるような理想的な形に社会は進まない。ネット社会もそうですが、社会は計算し、制御しようと思えば思うほど、コントロールできない方向に進むものなのです。

こういったアンビバレンスな視座や世界観で、物語が巧みに動いていく様は見事ですが、SFファンならいざしも、エンタメ作品と考えると少しテーマが高尚過ぎるような気もします。また、同時期にマット・デイモン主演作で同じような色の作品(「サバービコン」)が公開されたこともあり、一般受けが少ししにくいようにも感じます。

次回レビュー作品は、「万引き家族」です。

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