『15時17分、パリ行き』:ヨーロッパ高速列車内でテロリストに身一つで立ち向かった3人の若者たちの物語。イーストウッド作にしては久々に残念な出来な作品だった。。

15時17分、パリ行き

「15時17分、パリ行き」を観ました。

評価:★

2005年8月21日、ヨーロッパを走る高速列車内でイスラム過激派の男が突如、自動小銃を発砲する事件が発生する。混乱の中、犯人に立ち向かったのは、旅行中のアメリカ人の若者3人だった。。名匠クリント・イーストウッドが、2005年にパリ行きの特急列車内で起きた“タリス銃乱射事件”を映画化した作品。主人公の若者3人組を本人が演じ、事件が起きた場所で撮影を行なうというリアリティへのこだわりが見ものな作品です。

御年もうそろそろ90歳を迎えようとするイーストウッドの最新作。映画を観始めた時期には監督・主演作が多かったですが、スクリーンを沸かせた「ダーティ・ハリー」も最近はメガホンをとるのみが多くなってきています。しかし、生み出す作品はまだまだ若い。近作の「ジャージー・ボーイズ」「アメリカン・スナイパー」「ハドソン川の奇跡」にしろ、どの作品でもまだまだ彼が未開拓だった領域にどんどん攻めていく若さを感じます。本作でも実際に起った事件現場で、しかも実際にあの場に立ち会った若者たちを映画の主演に起用するという大胆な試みを実践させています。

ただ、その意欲的な取り組みは買うものの、本作は大胆な空振り三振をしてくれているような肩すかし感を感じます。予告編ではすごく泣けそうな感じだったのに、実際に事件で身体を張った若者三人が登場してくると分かると、事件の顛末がある程度予想できてしまい、事件の結末を知らなかった僕のような存在の人にはまず”あれれっ”と思ってしまう。もちろん彼らの勇気は讃えられるものだし、彼らがそうした身を挺した行動に向かったのも、様々な成長の苦しみの中で到達した奇跡であることも理解できます。ただ、それは彼らの人生の若き一ページにまだ過ぎないと思うし、何かを成し遂げたという達成感にはまだほど遠い位置にある。むしろ、演技が素人な彼らを使ったことで、特に回想シーンなどの演技の拙さが逆に目について仕方なかった。彼らの親役がプロの俳優なだけに、演技の違いがより鮮明に出過ぎた気もします。

事件を克明に追っていくので、ヨーロッパ高速鉄道の旅のような、美しいヨーロッパの風景がスクリーンで堪能できたのがせめてもの救いでしょうか。イーストウッド作では、多分一番ガッカリした部類の作品になってしまいました。。

さて、仕事が忙しく、映画感想のストックが過去最高なくらい溜まりきっています(苦笑)。こうなったときの通例として、今までどおり順追いしていく方向と、最近観た作品と交互にレビューしていきます。

ということで、次回レビュー予定は、「ファントム・スレッド」です。

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