『8年越しの花嫁 奇跡の実話』:長い月日も愛することを忘れなかった2人に起こる奇跡の物語。主演の2人のいい意味での田舎臭さが等身大のドラマを成立させている秀作!

8年越しの花嫁

「8年越しの花嫁 奇跡の実話」を観ました。

評価:★★★★

尚志は、車の整備会社で働く地味めな整備工。ある日、体調がよくなかったが、同僚の無理な誘いを断りきれず、合コンに付き合うことに。その会にいた麻衣に飲み会終了後、態度を咎められた尚志だが、真っ正直な彼の態度に彼女はどことなく惹かれていく。デートを重ね、互いの距離を縮める2人。やがて結婚式を控えることになるが、突然に麻衣が病気で意識不明の重体に陥る。昏睡状態のまま月日は流れるが、尚志は結婚の約束を守り、ひたすら麻衣の傍に彼女の家族とともに連れ添う日々を過ごしていく。そんな彼の一途な願いが通じ、麻衣は目を覚ますが、更なる試練が2人を待ち受けていた。。「奇跡の結婚式」と話題を集めた実話を、「64―ロクヨン―前編/後編」の瀬々敬久が映画化した作品。

一昨年末(2016年末)も、「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」が静かにヒットしましたが、同じように年末公開され、年を越しても静かなヒットが続いているのが本作。僕も実話がもとになっていると知ってはいたものの、当初は甘い難病メロドラマかなとも思っていて避けていたのですが、これが観てみると凄くいい作品で感動しました。タイトルにもあるように2人が結婚を決意してから、花嫁が突然の病に冒され、実際に式を上げることができたのが8年後という、この長い月日をもっても2人の心が分かつことがなかったという話自体もいいのですが、それよりも本作でいいなと思ったのが、主演2人のいい意味での存在感の無さなのです。

本作の公開にあたって、宣伝も兼ねたニュース番組のドキュメンタリー(実話部分)を観させていただいたのですが、(ちょっと失礼かもしれないですが)この元になっているお話の2人というのはすごくいい感じの田舎のお兄ちゃんとお姉ちゃんといった風貌の方で、このお話に佐藤健と土屋太鳳というイケメン俳優の2人が釣り合うのかなということを少し思ってしまったのです。でも、この作品では俳優としての彼ら2人のオーラは全くなくなっていて、田舎に住む素の男女というのが浮き彫りになっている。はっきりいってしまうと、顔は佐藤健と土屋太鳳だけど、細かい仕草や台詞なんかがちょっとダサくて、田舎っぽいなというところがうまく出ている。しかし、これがスクリーンの外の世界に生きる私たちの身近なドラマ感を出しているし、普通の人でも、愛することで奇跡をも、カッコよさをも出せるんだと信じさせてくれるのです。これは意外に凄いことだと思います。

それにタイトルにもある、「8」という数字も重要なポイントになっています。まぁ、当てこすりかもしれないですが、このアラビア数字の「8」という字と同じように、この世界で出会った2人が麻衣が突然昏睡状態に陥ることによって切り裂かれ(「8」の頂点の部分)、別々の世界を生きることになる。それがある時、麻衣の目覚めによって、一旦交差(「8」の中央の交差部分)するのですが、麻衣に残った後遺症によって再び引き裂かれることになってしまう。それが尚志が麻衣のために残した想いによって、新しくまた交差することになっていく(「8」の底辺の部分)。人生は出会って、別れての繰り返しですが、愛をもって接する思いがあれば、この「8」という数字文字のようにいつまでも再び交差するものだなと改めて感じる作品でした。

次回レビュー予定は、「笑う故郷」です。

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