『リュミエール!』:映画が誕生した当初のフィルムが詰まった至極の90分。映画好きには是非観てもらいたい様々な映画手法の原点!

リュミエール!

「リュミエール!」を観ました。

評価:★★

1895年12月28日パリ。ルイ&オーギュスト・リュミエール兄弟が発明した“シネマトグラフ”で撮影された映画『工場の出口』等が世界で初めて有料上映された。全長17m、幅35mmのフィルム、1本約50秒。現在の映画の原点ともなる演出、移動撮影、トリック撮影、リメイクなど多くの撮影技術を駆使した作品は、当時の人々の心を動かした。1895年から1905年の10年間にリュミエール兄弟が製作した1422本の短編作品から、108本を厳選し1本にまとめた作品。監督・脚本・プロデューサー・編集・ナレーションは、カンヌ国際映画祭総代表であり、リヨンのリュミエール研究所のディレクターを務めるティエリー・フレモー。

昨年から黒澤作品をスクリーンで見ようという活動を個人的にしているのですが、「生きる」「野良犬」「天国と地獄」などの現代劇を観ていると、作品の内容だけではなく、ロケで撮影された1950〜60年代の日本の風景というのを楽しめたりしています。他にも有料放送で1970〜80年代のドラマを観ていると気づくのが、僕が小さい頃の懐かしい風景。時というのは万人に共通に過ぎ去っていくものですが、こうした歴史を振り返るという意味での映画・映像鑑賞というのもオツではないでしょうか。その意味で、本作が飛ぶのは映画が発明された今から約120年ほど前の世界。映像で見ると確かに古い、、と感じるのですけど、120年というと日本だったら100歳を超えるくらいの超高齢者の方が、子どもの頃に観た風景。そう思うと、本感想文を書きながらですけど、意外にそんなに古くない昔なのかなとも思えてきます。でも、日本の時代にすると明治28年。まだ写真すら珍しかった時代に、映像で人々を驚かせようとする人たちがいたというのも少し驚きです。

作品を観ていて驚くのは、やはり映像をそのままアーカイブしているだけではなくて、1本数十秒という短い中にも、1つの映画作品として様々な工夫をしようとする映像作家たちの姿でしょう。有名な列車の到着では、如何に列車が観客に向かって飛び出てくるように感じさせるかを構図から研究しているのがよく分かるし、街中の風景を捉えるのにもただカメラを向けるだけではなく、どの人物にフォーカスして追っていくかを計算している。そして、撮影フィルム自体に手を入れることで、瞬間的に人や物を動かして、あたかも事故が起きたように偽装したり、カメラ自体を自転車などの動くものに取り付けて、ひたすら動き続ける子どもの表情を捉えていくなど、どうすれば出てくる人物の内面に迫り、観ている人を驚かせるかを考え尽くしている。こうした様々な技法の中で、現代の特撮・VFXであったり、モーションカメラやドーリーなどの撮影機材やそれを使った映像手法が生まれていくのです。そこにはやはり人の心をどうやって動かすかというクリエイターたちの魂が宿っている。映画の歴史はたかだか120年ですけど、そこに培う精神というのは今も昔も共通なんだなと、様々な作品を観て気づかされました。

ただ、1本の映画としてはひたすらシネマトグラフのショートフィルムが流れ、それについての解説を聞かされるので単調なのは確か。余程興味を持って鑑賞しないと、少々眠たくなるかも、、です。

次回レビュー予定は、「十年」です。

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