『ローガン・ラッキー』:ソダーバーグ4年ぶりの復帰作はオーシャンズ11に通じる強盗劇!男のカッコよさは見かけでは決まらない、、を地で行くカッコよさに痺れる!!

ローガン・ラッキー

「ローガン・ラッキー」を観ました。

評価:★★★★★

足が不自由で仕事をクビになり、家族にも逃げられ失意の中で暮らすジミー。対する弟のクライドも戦争で片腕を失い、今ではしがないバーでバーテンとして悶々とした日々を送る毎日。こんな不運続きのローガン兄弟は人生の一発逆転を狙い、ジミーが工事員として関わったシャーロット・モーター・スビードウェイで年に1回開催されるNASCARのレース中に、主催者の金庫に集まってくる金を盗む計画を立てる。強盗計画の中で重要な任務となる金庫の爆破を実行するため、その道のプロで服役中のジョーをまず脱獄させる計画を立てるのだが。。「オーシャンズ11」シリーズのスティーヴン・ソダーバーグが4年ぶりに撮り上げた監督復帰作。

「トラフィック」、「エリン・ブロコビッチ」、「ソラリス」と、僕が映画をよく観るようになったキッカケを作ってくれたのが、スティーブン・ソダーバーグ監督といっても過言ではありません。まだ若くして監督引退を宣言した2013年は少々驚きましたが、4年の休養期間を開けて復帰したというのは、一ファンとしては喜ばしい限りです。とはいうものの、メジャーデビュー作となる「イギリスから来た男」を始めとした上記の初期の作品には輝かしさがあるものの、年々と作品の評価が微妙になってきたのも事実。正直、僕も彼のファンではありますが、彼の作風は?と言われると、未だに答えを窮するように思います。キャリアとしては製作畑からスタートしていますが、後年はカメラを背負って撮影監督にも徹する作品もあって、「オーシャンズ11」シリーズなどに観られるような洗練されたスタイリッシュな映像感覚には定評のあるように感じますが、「マジック・マイク」や「恋するリベラーチェ」など少し下世話な作品も手がけるなど、作品としてはとりとめのなさをも感じざるを得ない。要するに、スタイリッシュなようで下世話好き、、というのが、彼の持ち味なのかと、今は捉えています(笑)。

その意味では、この復帰作は痛快でしょう。予告編を観ても分かりますが、とても「オーシャンズ11」を撮った監督とは思えないほど、粗雑さ満載なキャラしか出てこない作品なのです。なんせ主人公となるローガン兄弟は両方とも身体が少し不自由で、仕事にも、家庭にも不運なことしか起きていない冴えない面々。彼らに力を貸すことになる、爆破マニアのジョーも破天荒っぶりが凄く、とても綿密な強盗劇を実行できるとは思えない。でも、そんな彼らが観ているコチラも仰天するくらいに、スマートな強盗劇を魅せてくれるので、思わずコチラもギュギュとスクリーンに惹きつけられます。この辺りの面白さは、まさに監督の出世作でもある「オーシャンズ11」と同様。というか、スタイリッシュな「オーシャンズ11」の持ち味と、スマートさの裏側に隠されていたダメダメ感が表出してくる「オーシャンズ12」や「オーシャンズ13」の下世話感が統合されている分だけ、本作のほうが評価が高いかもしれません。

よく男のかっこよさは顔だけでは決まらないといいますが、これは本作にあるような言葉でしょう。いつもは周りと歯車がかみ合わない分、どうしても見た目のカッコ悪さしか目につかなかったローガン兄弟も、人生を賭けた一大強盗劇で男を上げるというところをピシッと魅せてくれるのです。だからこそ、本作のラストにあるバーでの俯瞰シーンは、「オーシャンズ11」のラストにも通じながらも、また違った味わいを見せる男のカッコよさに痺れざるを得ません。ソダーバーグの監督復帰を喜ぶとともに、次に彼がどういう人物のカッコよさをスクリーンで見せてくれるのか期待せずにはいられないのです。

次回レビュー予定は、「リュミエール!」です。

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