『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』:日本のような日本でない空間で繰り広げられる一大人形アクション!スタジオライカの力は感じるが、もう少し物語に工夫と愛着が欲しい。。

KUBO 二本の弦の秘密

「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」を観ました。

評価:★★☆

日本語吹き替え版にて。

三味線の音色で折り紙を意のままに操る不思議な力を持つ少年・クボは、母と最果ての地で静かに暮らしていた。母が語るところによると、彼は小さき頃、闇の魔力を持つ祖父に命を狙われ、彼を守ろうとした父親は命を落としたという。彼を守るために生気を失いつつある母親だったが、クボがあるとき闇の刺客に察知されると、最後の力を振り絞り、彼を守り神であるサルとともに逃したのだった。亡き父と母の復讐を誓うクボは、新たにクワガタを仲間に加え、闇の力に命を奪われた両親の敵討ちの旅を続けるのだが。。「コララインとボタンの魔女」のスタジオライカが手掛けたストップモーションアニメーション。

2009年に公開された映画「コララインとボタンの魔女」は、当時勃興して(今は廃れて)きた3D映像を巧みに使った傑作で、「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」のヘンリー・セリック監督の腕もあって、残酷なまでに美しく暗いストップモーションアニメの秀作だった記憶があります。その意味で、久々のスタジオライカの作品(映画としては、2012年の「パラノーマン ブライズ・ホローの謎」以来)として、そして、「ウォレスとグルミット」や「ひつじのショーン」などのストップモーションアニメ好きとしても期待した作品でした、、が、アニメ作品としての腕は上がったとはいいつつも、内容から言っても日本人には少し厳しいかなと思う出来だったかなと思います。

本作の素晴らしいところは、やはり造形とアニメショーンのダイナミックさでしょうか。「コラライン〜」もそうでしたが、VFXを使わずに、どうやってやったのかという映像表現がすごく多岐に渡ってあるのです。特に、中盤の大きなロボットのような、昆虫のような大きなバケモノはどのように操作しているのかと思いましたが、エンドクレジットで見れるメイキングで見ると、本当に巨大なロボットでしたね(笑)。今の時代、何でも簡単にCG合成しちゃうところですが、動きのダイナミックさも1つ1つちゃんとした形のあるもので表現し、それをカメラワークで魅惑的に見せる力があるのが、スタジオライカの真骨頂というところでしょう。

それは物語の方にも実は巧みに反映されています。なにせ舞台は日本!?? 主人公が巧みに操るのも、折り紙であるというところも、日本の伝統的な手づくり、ものづくりの良さを作風とは上手くつなげていると思います、、、が、何でしょう、この本作で描かれる日本はとても日本とは思えない風の日本なのです。冒頭から、クボの旅立ちのシーンまではよく描かれている(特に、死者が帰ってくるお盆を取り上げるところなど)とは思うのですが、母親の最後の力で世界の果てに飛ばされ、「ロード・オブ・ザ・リング」風な物語が始まると日本感はなくなってしまいます。終盤に出てくるお城なんかは、もはや中華大陸風のお城、、まぁ、頑張って世界に飛ばされたのだから、もはや日本じゃないと言い聞かせると、終盤にまた元の場所に戻ってくるので、やはりエスニック感が強くなりすぎているかなと感じてしまいます。

まぁ、こうした日本中心という異種混合な世界観を許容するにしても、物語もちょっとストレート過ぎて味が薄いかなと思ってしまいます。折り紙が動き出す楽しさのような、ストップモーションアニメの原点が詰まった面白さはあるのですが、敵も含め、可愛らしいキャラクターが登場しないのも、子どもたちにとってはどうかなと考えたりします。

次回レビュー予定は、「IT イット ”それ”が見えたら、終わり。」です。

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