『ポンチョに夜明けの風はらませて』:卒業間近でも出口の見えない若者たちの疾走ロードムービー。伝えたいテーマは分かるが、お話的に成長できない若者たちのお遊びにしか見えない。。

ポンチョに夜明けの風をはらませて

「ポンチョに夜明けの風をはらませて」を観ました。

評価:★

なんとなく日々を過ごす又八、ジン、ジャンボの男子高校生3人組。ジンは一流大学への進学に挑戦し、ジャンボは実家のとんかつ屋を継ぐことを決意していたが、又八だけは何も進路を決められないでいた。ウヤムヤとした気持ちが鬱積する中、彼らは友人の中田とともに、卒業式の乗っ取りライブを計画する。そして卒業を間近に控え、ジンの大学受験後、すぐに車で高校最後の旅に出た彼らは、道中、刺激的な大人たちと出会い、自分たちの生き方を見つめ直していく。。早見和真による同名青春小説を「HOMESICK」の廣原暁監督が映画化した作品。

「孤高のメス」の又八役の太賀、「東京難民」のジン役の中村蒼、「ちはやふる」や大河ドラマ「女城主 直虎」での活躍が光るジャンボ役の矢本悠馬という、今がちょうど脂が乗っている若手俳優3人が出演する男子高校生ムービー。僕自身も経験があるのですが、中学くらいで心も身体も大人になってしまう女子に対し、男子というのは高校や下手すると大学を卒業しても大人になりきれない人が多い。もちろん、それには(本作のジャンボのように)昔ながらの家を継ぐための男子としての在り方というのも関係してくるかもしれないですが、単純に精神的にも経済的にも親から自立することがなかなかできない情けない姿みたいのもあるのかなと思ったりします。親の干渉からは逃れたいけど、自立した生活を送るような勇気もない、かといって自らちゃんと主張したいような夢もない、、ある程度甘やかされてる子ども時代と、厳しい大人社会の現実との狭間の葛藤も相まって、自分自身がどうしたらいいのか分からない。若いパワーみたいなものは溢れているけど、それをどう解消していけばいいのかいけないという五里霧中状態を描くというのは、青春映画の一シーンとしてあったいいのかなと思います。

なので本作に、僕は以前、この手の作品で良かった吉田康弘監督の「クジラのいた夏」のようなイメージの作品かなと思って鑑賞しましたが、それよりももっと子ども目線な作品だなと思いました。なんとなく日々をやり過ごせないとやりきれない高校生たちというのは分かるのですが、本作には登場してくる女子たちも含めて、みんな子ども。よく子どもの遊びが、みんな自分勝手なことをしてもなんとなく楽しく過ぎ去るように、彼ら彼女らは単純に大人になりたくない逃避行で集まり、一晩を過ごしていく。もちろんやっている行動は意味不明。途中、尺八の別れた父親を求めていくとか、ジャンボとデリヘル嬢がいい関係になっていきそうな予感を匂わすシーンはあるものの、それがお話として何かまとまりを見せていくかというと、そうはならない。ただ、登場しているキャラクターが自由奔放に数日を過ごすというだけでは、観ているこちらは何を感じればいいのか正直分かりません。。

まぁ、唯一の救いはさすが今いい若手3人たちなので、各シーン毎では印象的な演技力を見せてくれるということだけですかね。単体で登場してくる中田役の染谷将太が、彼ら以上に作品のテーマ的な部分をさらっていくのかいかんせんというところではありますが(笑)。

次回レビュー予定は、「ザ・サークル」です。

コメントを残す