『女神の見えざる手』:目的の実現のためなら手段を選ばない天才ロビイスト。女性の活躍はして欲しいが、身近に彼女のような人がいたら怖いかもしれない(笑)

女神の見えざる手

「女神の見えざる手」を観ました。

評価:★★★★

政府の裏で、政治の戦略を動かすプロの”ロビイスト”。エリザベス・スローンは大手のロビー会社に所属し、真っ赤なリュージュと一流ブランドを身に着け、日夜天才的なほどの頭脳から戦略を繰り出す花形ロビイストだった。しかしある日、銃所持を支持する団体のロビー仕事を断り、突然、銃規制派の小さな会社に移籍する。全米500万人の銃愛好家、そして彼らの支援を受け、巨大な財力を抱えるプロのロビイスト集団に、彼女は1人巨大権力に立ち向かうのだが。。政府を裏で動かす戦略のプロ“ロビイスト”の知られざる実態に迫る、「恋におちたシェイクスピア」のジョン・マッデン監督作品。

ちょうど本作を観た時は2017年衆議院選挙の直前で、小池百合子東京都知事が新党で戦いを挑むか、挑まないかが注目をされていたとき。マスコミをうまく味方につけて、自分の思う通りに政略を行ってきた小池都知事の動きが、立場は違えど、同じ政策を動かす影のロビイスト、本作の主人公エリザベス・スローンと重なりました。小池都知事も、本作のスローンもそうですが、ある意味、彼女たちはプロ中のプロ。これだと思う信念を実現するために動く。これだけ書くと潔いのですが、その信念(目標といってもいい)を実現するためには、時には非人道的なことでも、あるいは味方を欺いたり、裏切ったりするようなことも厭わないというのが、彼女たちの凄いところです。別の感想文で書いた覚えがありますが、これを男性、女性という性差で書いてしまうのはあまりに陳腐だとは思うのですが、やはり情動的に動くことが多い男性にはできないこと。手段を選ばないまでの実行力を持つのはスローンみたいな人だけなのかもしれないですが、ラストの驚くような展開を観ても、やはり女性というのは凄い存在なのかも、、と思わせる作品になっています。

それにしても、ジョン・マッデン監督は「恋においたシェイクスピア」でも、グウィネス・パルトロウ演じるヴァイオラは男性しか立つことが許されなかった舞台に男装までして立とうとするし、近作の「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」でも、ジュディ・デンチらを中心とした中高年オバサンに再び人生を輝かせるところを描ききるなど、人生を立ち上がっていく女性たちを実に綺羅びやかに撮り上げます。これは「コレリ大尉のマンドリン」や、「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」でもそうだったように、どこか優男な男性を脇に従えながら、女性が自らの足で立っていこうというところを共通して描いているともいえます。衆議院選挙の結果を見ても、未だに女性が少ない男社会な日本にとって、本作のスローンやマッデン監督の他の作品の女性たちのように、男性も憧れてしまう女性が日本にも多く登場することを願いたいものです。

次回レビュー予定は、「ミックス。」です。

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