『ブレードランナー ファイナル・カット』:SFの代表作にして、非常に評価の難しい名作!なんだかんだで物語の奥行きを深めることになっているのは名作といわれる由縁!

ブレードランナー ファイナル・カット

「ブレードランナー ファイナル・カット」を観ました。

評価:★★★☆

2019年、近未来のロサンゼルス。人類は宇宙に進出し、地球に残された人々は大気汚染の高層ビル群が乱立する中、生きてきた。宇宙開発にあたり、人類未開の危険な地域の開拓を担うため、バイオ工学の粋を集めて作られたのがタイレル社の人造人間ネクサス6型、通称レプリカントだった。驚異的な肉体能力を誇る彼らだが、人類への記念を未然に防止する目的で可能生存期間は4年に設定されていた。あるとき宇宙開発に従事していたレプリカント4名が反逆を起こし、地球に侵入したという情報がもたらされる。反逆を起こしたレプリカントを解体する警察組織、通称”ブレードランナー”に属する刑事のデッカードは、逃亡した4体の行方を追うべく、捜査を開始するのだが。。殺人を犯し逃亡するレプリカントとそれを追う捜査官を描いたSF大作「ブレードランナー」の製作25周年を記念し、リドリー・スコット監督が自身の手で2度目の再編集を行った作品。

80歳を超えようとする今でも精力的な活動を行うリドリー・スコット。近作でいっても、今年の「エイリアン コヴェナント」や昨年の「オデッセイ」など、力のある作品を送り続ける彼ですが、僕の中は結構な当たりハズレが多い人だなという印象が強いです。例えば、昨年の絶賛した「オデッセイ」と、今年の低評価をした「エイリアン コヴェナント」などが良い例。高評価できる傑作群(僕の場合は、「エイリアン」、「グラディエーター」、「ハンニバル」など)があると思ったら、これがリドリーの作品なの?と思ってしまうものもあったり(こちらの僕の場合は、「G.I.ジェーン」、「キングダム・オブ・ヘブン」、「プロヴァンスの贈りもの」など)と、甲乙が非常についてしまう監督さんなのです(笑)。その意味では、本作「ブレードランナー」というのは特異的で、単純なSFアクションとして観てしまうと及第点レベルかなと思うのですが、じっくりと何回も観ていると違う感動にも襲われる作品なのです。

本作は製作の経緯をみても特殊で、劇場公開版やインターナショナル版、ワークプリントからディレクターズ・カット版と多種多様なバージョンが有るのです。通常は、劇場公開時に公開前のモニタリングや上映時間など興行上の都合でカットされてしまった劇場版に対し、DVD等で頒布されるときにカットシーンを盛り込んだディレクターズ・カット版があるくらいなのですが、本作は製作スタジオとのゴタゴタがあって、製作サイドが突っ走ってリドリー抜きで撮りあげたシーンを盛り込んだら、逆にリドリー版より、原作の雰囲気にマッチしている等々、製作、監督、そしてコアなファンなどを巻き込んで、今発売のブルーレイを観ても5ヴァージョンくらいが乱立している不思議な作品になっています。

原作のフリップ・K・ディックについては「マイノリティ・リポート」が映画として公開されたくらいから、彼の著作に接するようになって好きになり、本作についても原作と対比させて見ると非常に面白いんです。だからこそ、本作は映画単品で見るとタルいなと思うのですが、原作を含めた世界観から観たとき、その物語の奥行に驚かされる。「スター・ウォーズ」や「マトリックス」のようにSF活劇としては拡がりが少ない(実際、物語が展開していくのもロサンゼルスの狭い空間のみですし)のですが、人の内面、そしてレプリカントの内面から迫る人としての生き死にの部分に深遠さを感じるのです。今回、「ブレードランナー2049」の公開に併せて、旧作上映の回を見させていただきましたが、映像とともに、この何ともいえないテクノサウンドの暖かさを感じるサウンドトラックも必見。映画単体ではオススメしにくいコアな作品ですが、ハマるとヤバい名作でもあります。

次回レビュー予定は、「女神の見えざる手」です。

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