『三度目の殺人』:実際のようなリアルな法廷劇は見ものだが、ミステリーとして曖昧な終わり方がどうかと思う。。

三度目の殺人

「三度目の殺人」を観ました。

評価:★★

勝利にこだわる敏腕弁護士・重盛はやむを得ず、30年前に殺しの前科がある三隅の弁護を担当する。三隅は解雇された工場の社長を殺し、死体に火をつけた容疑で起訴されていた。捜査の過程で本人も自供をしており、このままでは死刑も免れない中、重盛は何とか無期懲役に持ち込めないかと事件の調査を開始する。三隅の犯行動機が薄いことに重盛は違和感を感じていたところ、意外な事実が浮かび上がってくる。。「そして父になる」の是枝裕和監督が再び福山雅治とタッグを組んだ法廷心理ドラマ。

2時間ドラマでもよく行われる、いわゆる法廷もの。日本でも人気が高いですが、ワイドショーでよく言われるのは、実際の法廷はあんな劇的なものではなく、裁判官、検察官、そして弁護士によって、審理は事務的に淡々と行われるということ。僕は裁判を傍聴したことがないので分からないですが、本作で描かれるような事務的な処理が実際なんだろうなと思います。本作の見所といっていいのか分からないですが、1つあるのはこうしたリアルな法廷劇でしょう。そして、事件に挑む重盛は(福山雅治という俳優が演じていることもあって)凄くやり手なできるビジネスマンのような弁護士として描かれる。それはそれで痛快なのですが、そんな重盛が今回対峙した三隅という被告人が、それ以上に食わせ者だったということが物語の見どころとなっているのです。

法廷をリアルなビジネスの場としていた重盛にとって、接見する度に、それに法廷の中でも証言を二転三転させる三隅の存在は厄介になっていく。こうした描写はとかく劇的な展開ばかりに着目される法廷劇でも、1人の人間が殺され、そして1人の人間が罪として裁かれるという人生の場を感じることができます。しかし、本作自体はそうした人が裁かれるというところにフォーカスしたいわけでもなく、三隅が犯罪者なのか、それとも止むにやまれる事情があったのかというミステリー部分に偏っている分だけ、やはり単純な法廷劇なのかなーと思わざるを得ない展開になっていくのです。それに是枝監督の持ち味でもあり、悪い部分でもある、余白の大きなドラマの終結の仕方は観る者の想像を掻き立てるというよりは、ミステリーとして大事なオチを付けないという一番まずい手に出ていると思います。監督自身の狙いなところもあるかもしれないですが、この何だか分からない終わり方は作品の印象を薄くしてしまったと僕は思ってしまうのです。

次回レビュー予定は、「パーフェクト・レボリューション」です。

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