『家族はつらいよ2』:家族をテーマにしながらも、単なるほっこり作品で終わらない力感あふれる続編!ゲラゲラ笑いながらも、社会派なところも魅せるところが山田監督の腕を感じる!

家族はつらいよ2

「家族はつらいよ2」を観ました。

評価:★★★★

家族の父・周造と母・富子の離婚騒動から数年後。今度は、気ままなドライブを楽しみながらも、最近クルマをこすってばかりいる周造の運転免許の返納をめぐって家族会議が開かれることになる。しかし、その家族会議の当日、周造が家に泊めていた旧友・丸田が息を引き取っており、大騒動が巻き起こる。。「東京家族」の出演陣が再集結し家庭内の悲喜こもごもを演じた、山田洋次監督の喜劇続編。

前作では熟年離婚をテーマに周造と富子の離婚劇と、末っ子の庄太と憲子の結婚という2つの出来事を悲喜こもごもで描いた良作でしたが、本作では平田家というよりは、旧友・丸田にフォーカスが当たった作品になっています。テーマはずばり独居老人の孤独死というところでしょうか。丸田という人間は若き時に妻に愛想をつかせられ、娘とともに出ていかれて、それ以来の音信不通という設定なのですが、別に丸田のように家族がいないという状況だけではなく、遠き故郷で孤独に暮らす老人であったり、認知症などで家族から無理やり施設に入れられて孤独に暮らす老人など、丸田という人間を通して、多くの孤独に生きることを余儀なくされている老人というのが投影されるのです。そうした中に、丸田に訪れる突然の死。細かい免許返納で揉めている平田家においての、この死が家族の意味合いを感じさせる機会をもたらすのです。

脚本(ほん)として、上手いなと思うのは、丸田だけではなく、前作では直接的には描かれなかった憲子の母と、その母が介護をしている認知症を患う祖母を出してくること。憲子の両親も離婚していて、母親が祖母の介護を一切見ているという老々介護の手前のような状況をも、独居老人だった丸田と同じように入れ込んでいること。まだ、憲子の母や祖母は平田家という家族があり、それが生きる希望になっている。1人で暮らすことが希望がないという状況と結論づけてしまうことは社会としては悲しいですが、これが日本の現実でもあるのです。それでも丸田が平田家一同から見送られるラストシーンは、日本もまだ捨てたもんじゃないという象徴的なシーンかもしれません。

こういう社会的な色合いが強くなった続編ですが、それでもシーンの各所で笑いを入れてくるところが山田監督の力量ともいえるところ。中高年層が多い中での鑑賞でしたが、劇場全体で笑いが起こり、最後は泣けるというのは、映画としては最高のエンターテイメントだと僕は思います。家族をテーマにして、家族全員が楽しめる傑作になっています。

次回レビュー予定は、「ゴールド 金塊の行方」です。

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