『ゴースト・イン・ザ・シェル』:やや安直なSF劇になってしまったのは残念だが、攻殻ファンなら作品の各所に散りばめられた名シーンを堪能すべき!

ゴースト・イン・ザ・シェル

「ゴースト・イン・ザ・シェル」を観ました。

評価:★★☆(攻殻ファンなら、もう1つ★追加してもいいかも。。)

2Dの日本語吹替え版にて。

世界でただ1人、脳以外は全身機械の体を持つ世界最強の捜査官。彼女に残されたのは、その脳の中に収められた僅かな記憶だけだった。彼女が率いるエリート捜査機関公安9課は、全世界を揺るがすサイバーテロと対峙する。その事件の捜査の中で、彼女の記憶と繋がり、驚愕の過去を呼び覚ましていく。。士郎正宗原作のコミック『攻殻機動隊』をスカーレット・ヨハンソン主演で実写映画化。監督は、自身も大の攻殻ファンという「スノーホワイト」のルパート・サンダース。

僕と「攻殻機動隊」との出会いは、2004年公開の押井守による映画「イノセンス」から。この「イノセンス」という作品自体が、攻殻における結構サブストーリー的な作品で、当時見たときは押井監督ならではの映像美には酔いしれたものの、お話の方は結構チンプンカンプンでした。その分からなかった部分を1995年の同じ押井監督の「GHOST IN THE SHELL」であったり、OVAの作品や、テレビアニメ化されたシリーズなどを観ていくうちに、この攻殻が持つ深遠さというか、物語の複雑さの中にある精神性みたいなところに惚れ惚れしてきた自分がいました。この電脳という、ロボットによって義体化された身体に宿る生身の脳が、単なるA.Iと違い、情報処理の中で人間の精神が如何に存在していくかというのは科学(サイエンス)としても面白いし、様々な事件の中で、自我の存在が宗教的に、哲学的に、どのように現実社会と位置づけられるかという考察が非常に面白いのです。特に、A.Iやロボットなど、現実化してくる近未来において、この攻殻が日本の精神性でも中心的な役割を果たしちゃうんじゃないか、、と思っちゃうくらいなのです(笑)。

まぁ、そういう考察は置いておいて、この映画作品はその様々なシリーズにて描かれる攻殻の中で、エポックメイクである押井守の1995年のアニメ映画「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」をベースに実写化されています。あくまでベースであり、原作と書かないのは、ストーリーは全く違うオリジナルとなっているからです。攻殻で発生する事件でよく描かれるのは、近作の「攻殻機動隊 ARISE」シリーズでも描かれたように、電脳に侵入して、自らの意思とは全く違う行動を起こさせるというハッキング関連のものが多いのですが、本作はそういうのには立ち入らず、主人公は全身義体のスーパー捜査官であり、ロボットのように活躍してきた万能さの裏側に秘められた過去をあぶり出すという構成になっているのです。バトーやトグサなどのサブキャラクターは実名で登場するものの、主人公である草薙素子が、名前無しの捜査官として位置づけられるのも、こうした物語設定になっているからこそ。見た目分かりやすいお話としているのは映画として描きやすいのでしょうが、この変更はやや安いSF映画になってしまったかなと思います。

でも、攻殻ファンにとって楽しめるのは、こうした変更されたお話の中でも、いろんなシーンで95年作の「GHOST IN THE SHELL」で見られたシーンが実写化されて観れるというところ。予告編でも見られるビルの襲撃と宴会場での人形との格闘シーン、水辺での逃走劇なども眉唾ですが、僕が一番興奮したのは、主人公が様々な現実社会のゴタゴタから逃げ、深い海の底でリラックスするところでしょうか。原作アニメでも、草薙が海や水の中で佇むシーンがいくつか登場するのですが、これが実写映像で見れるところは本当に嬉しいです。バトーやトグサも実写化イメージがその通りだし、アジアンミックスされた近未来都市の描写もなかなかだと思います。日本語吹替え版では、アニメシリーズの声優キャストがほぼそのまま(荒牧課長だけ、ビートたけしの音声そのままですが、、)登場するので、攻殻ファンなら日本語吹替えで楽しんで欲しいです。

次回レビュー予定は、「名探偵コナン から紅の恋歌」です。

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