『LION ライオン 25年目のただいま』:現代技術が駆使された故郷を探す旅!映画らしい映像と物語構成の巧みさに圧倒される作品!

LION ライオン 25年目のただいま

「LION ライオン 25年目のただいま」を観ました。

評価:★★★★★

オーストラリアの青年サルーは、幸せな家庭に育てられ、好青年に育っていた。しかし、彼は生まれたインドで5歳のときに迷子になり、家族と生き別れたまま養子に出されたという過去があったのだった。彼は残されたわずかな小さい時の記憶と、はぐれたときに最後に生き別れた兄の消息を探すため、Google Earthで自分の生まれた家を探し出そうとするのだが。。「英国王のスピーチ」の製作陣による実話を基にしたドラマ。監督は、長編初監督のガース・デイヴィス。

昔、「母をたずねて三千里」というフジテレビ系列のTVアニメがありましたが(注>僕はリアルタイムではありません笑)、それを現代に置き換えたようなドラマになっています。小さい頃の僅かな記憶を頼りに、人の消息を探したり、昔いた場所を特定したりするというのは、それこそ十数年前までなら、様々な資料や写真をあさりながら、人に聞きながら、最終的には行ってみて確かめるという、とてつもないコストをかけないといけなかったでしょうが、今はGoogleがあれば事足りる。Googleマップで位置を推定し、実際の街の風景をGoogleEarthやGoogleストリートを使って確認し、現地の人とはメッセンジャーやハングアウトを使ってインタビューすればいい。僕も旅行に行く予定を立てるときや、旅行とは言わずとも、近所でも初めて行くところはGoogleにお世話になって下調べをしたりしますが、普段の生活でも非常にコストレスでそういうことを行えることになってきたことに改めて驚愕です。こういうのもグローバル化の1つの現われではないかと思います。

さて、そういうことは置いておいて、映画としては非常にドラマティカルな大河ドラマになっていると思います。特にいいのが、作品の前半部に描かれるサルーが兄のグドゥとはぐれ、1人インドのスラムを漂いながら、奇跡的にもオーストラリアの養父家族に巡り合うまでのシーン。サルーの子ども時代を演じたサニー・パワールの強い眼力を発揮した演技もさることながら、この広いインドを1人の少年がさまよい歩き、いろいろな人々と出会って別れていく、、この描き方が凄くいいのです。この力強い前半部があるからこそ、後半の肝である青年になったサルーが再びインドの地に降り立っていくというところの感動につながっていくのです。それにサルーに出会いながらも、別れて二度と会えなくなっていく通り過ぎる人たちの描写が強く印象に残っていくのです。カメラも、その人そのものを映し出すのではなく、例えば、駅の喧騒そのものにフォーカスしたり、スラム街の逃走シーンでは、人ではなく追われる影に焦点を合わせたりと、少しずつズラしていくことで印象度を更に上げていくのです。この計算された絵作りは、すごく映画らしいというか、効果的だなと感心せざるをえません。

お話の内容としては、ぶ厚めな前半部に対し、オーストラリアで成長した後を描く後半部がやや薄いのが気になります。ニコール・キッドマンやルーニ・マーラなどの大物俳優が登場するものの、そのためにやや印象が薄まってしまった感があるかなと思います。でも、最終的に実話であるということを効果的に盛り上げるエンドクレジットも含め、映画全編に優しい視線があるのが、すごく心暖まる作品に仕上げていると思います。これはスクリーンで一見の価値ありの作品になっています。

次回レビュー予定は、「ゴースト・イン・ザ・シェル」です。

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