『島々清しゃ』:沖縄の美しい風景で紡がれる”音”を巡る物語。線の細いドラマを”音楽”が肉厚にしている秀作!

島々清しゃ

「島々清しゃ」を観ました。

評価:★★★☆

沖縄の離島、慶良間諸島・座間味村。耳が良すぎて少しの音のズレさえも頭痛のタネになってしまう小学生のうみは、三線の名手であるおじいと2人で暮らしていた。ある夏の日、コンサートのために東京からやって来たヴァイオリニストの祐子と出会う。祐子がコンサートのために座間味小中学校の体育館を訪れたとき、うみは耳障りな音の原因になっている吹奏楽部の面々と小競り合いを起こしていた。しかし、祐子の奏でる美しいバイオリンに心を許したうみは、おじいと祐子とを引き合わせる。一方、うみは不協和音を響かせる吹奏楽部への入部を希望するが、怪訝な顔をする部員たちの前に入部を断られてしまう。頑なに閉ざしていた自分自身を徐々に解放していきながら、うみは自分自身の音を見つけていこうとする。監督は「転がれ!たま子」の新藤風。

単純に一言で言ってしまえば、小中学生を中心とした吹奏楽部のお話であるのですが、前半は主人公のうみに話がフューチャーされるので、一人の少女の成長物語と説いたほうがすっきりするかもしれません。沖縄・座間味の美しさも然ることながら、何といってもいいのが、全て”音”であり、”音楽”で物語が紡がれていくというところでしょうか。正直、お話としてはどのエピソードもやや線が細く、うみを演じる伊藤蒼であったり、祐子を演じる安藤サクラの役者としての上手さに引っ張られているところがあるのですが、それ以上にキーポイントとなる”音”や”音楽”でのドラマのつながりが全てを丸々OKにしてしまうほどの美しさを保っているのです。これは音楽映画といってもいい。役者の演奏(演技?)もすべて完璧で、ドラマも一層盛り上げているのです。

思えば、”音楽”と人々の暮らしが根付いているのは沖縄を置いて他にないでしょう。音楽というのは不思議なもので、昔の曲を聞いただけで小さい頃や青春時代に一気に引き戻されたりもする。単なる”音”の集まりだけではなくて、そこに秘められた感情なり、教えなりがしっかりと詰まっているものだと思います。日本でも古くから民謡であるとか、伝統的な踊りなどの中で音楽が生活の一部になってきたところもあると思いますが、それが近現代の中でどこか薄まっているような気がしないでもありません。形は変わっても、音楽が通じ合わせる想いというのを今後も大切にしないといけないと思わされる一作でした。

次回レビュー予定は、「クリミナル 2人の記憶を持つ男」です。

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