『シーズンズ 2万年の地球旅行』:映像は迫力はあるが、中身は平凡な動物ドキュメンタリー。。

シーズンズ

「シーズンズ 2万年の地球旅行」を観ました。

評価:★★☆

日本語吹替え版にて。

「WATARIDORI」、「オーシャンズ」のジャック・ペラン&ジャック・クルーゾ両監督による動物ドキュメンタリー。映画館で動物ドキュメンタリーが公開になるようになって久しいので、よく混同されがちになるのですが、同じ動物ドキュメンタリーでも、英国BBCが製作するBBC EARTHのシリーズと、本作のようなペラン&クルーゾ監督によるフランス発のシリーズと実は2つの主流があるのです。ダイナミックな自然の情景美を、最新鋭の技術で迫力ある映像を捉えることを主眼にしたBBC EARTHシリーズと違い、ペラン&クルーゾ監督によるシリーズは人間を登場させて、全体の調和を壮大なフィクションのように仕立てるのが持ち味。副題についている、「2万年の地球旅行」をキーワードにし、地球の歴史の1ページを動物たちのドラマで描いていきます。

こうした物語性のあるドラマを織り込んだ作品作りとともに、「WATARIDORI」のヒットで世間を賑わせたのは、ドキュメンタリーでありながら、出てくる動物たち(全てではないと思いますが)に演技をさせるということ。「ベイブ」や「ドクター・ドリトル」のような劇映画に出てくる調教された動物というより、餌付け等をされ、撮影クルーやカメラなどを怖がらない動物たちという意味での、”演技”をする動物なのです。なので、彼らの動きそのものは野生のままでありながら、カメラをとことん意識することなく、ありのままに近い形での映像を撮ることが可能になる。「WATARIDORI」でも見せたように、鳥たちにカメラを付けて、まさに鳥の目線で空中を浮遊したり、ポスターにもなっている馬たちが森の中を巧みに疾走していくシーンの迫力はなかなかのものです。

ただ、本作で気になるのは、「2万年の地球旅行」といいながら、その”旅行”と銘打っている部分がなかなか感じられないところ。氷河期が終わり、地球に四季というタイムサイクルが登場し、生き物たちが春夏秋冬を巡る中で生きている姿を捉えている、、、という感じですが、引いた目で見ると、単純に四季の移り変わりの中で生きている動物たちを捉えている平凡な動物ドキュメンタリーの枠に収まってしまっているのです。確かに原始時代を生きている人間たちがフィクションドラマで出てくるものの、そこと連続したドラマ性がドキュメンタリー部分に見い出せず、ただ単調なドキュメンタリーを観させられている感が最後まで拭えなかったです。それに日本語ナレーションもどうでしょう? 動物たちの観たままの行動を言葉にしているに過ぎず、更に単調さに拍車をかけているように思えてなりません。これはフランスの製作側の意図がちゃんと反映されているのか(チェックが入っているのか)、甚だ疑問を感じずにはいられませんでした。

どこかで観たような映像が続いた「オーシャンズ」よりは映像のクオリティは格段にアップしていますが、「WATARIDORI」を觀た時の感動(懐かしき、今はなき新宿高島屋タイムズスクエア!)を越える作品をペラン&クルーゾ監督には期待したいものです。

次回レビュー予定は、「信長協奏曲」です。

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