『信長協奏曲』:TVシリーズの面白さはそのままだが、結局TVドラマファン向けの映画に留まっている。。

信長協奏曲

「信長協奏曲(のぶながコンチェルト)」を観ました。

評価:★★☆

2014年にTVドラマ化された、石井あゆみ原作の同名コミック映画化作品。僕は最初、予告編でこういう面白そうな作品があることを知り、TVドラマシリーズを見直し、原作コミックも1巻だけ読んでからの鑑賞となりました。基本はTVドラマの延長にある映画化作品であり、原作コミックの味わいは少々薄いような気もしますが、ドラマ版の発想力の豊かさというのは、原作の目の付け所の良い面白さというところからきていることを、本作でも、また振り返って見たドラマシリーズでも感じました。主演の信長と入れ替わってしまう高校生サブローを小栗旬、信長の妻である濃姫・帰蝶を柴咲コウが演じています。

本作の面白さというのは、”うつけ”と呼ばれた破天荒な信長を、現代の頭の悪いが、元気だけは一人前の高校生が成り代わってしまうというところ。スマフォや恋愛観などの現代の常識も、およそ400年前の戦国時代においては奇抜な考えそのもの。日本史もまるで分かっていないサブローが、そうした古い時代を現代の常識で打ち破っていくのだから、戦国の人から見れば、キワモノの”うつけ”そのものに見えてしまうという、物語の奇抜な発想が本作の面白い所以(ゆえん)なのです。しかし、本作の魅力はそこまでに留まらず、多くの者が命を散らした群雄割拠の戦国の世の中で、”人の命が一番大事”と真っ直ぐな想いを持ち、万人のために天下泰平の世を作っていこうという、どこまでもストレートなサブローの生き方みたいなところに、なぜか心を揺さぶられてしまう。それにあれよあれよという間に、桶狭間の戦いや姉川の合戦などの歴史イベントが、ドラマの中に見事に辻褄が合うようにハマっていくのも傑作そのものなのです。

そうしたTVシリーズで組み立ててきた面白さは、映画でも十分に受け継がれています。同じキャストのまま、歴史は信長が本能寺の変で死ぬことになる直前から、本作はスタートしていきます。サブローが信長としてやっと望みの天下統一目前まで来ており、本物の信長は、本能寺の変で謀反を起こす明智光秀になっている。それに絡んでくるのが、幼少期の思い出から信長を恨むという異色キャラクターとなっている羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)。ドラマの展開に触れてしまうと、全部ネタバレになるので、感想文として触れれるところがあまりないのですが、僕が予想した展開のほぼほぼ同じ通りに進んだ感じがします、、、とだけ書いておきましょうか(笑)。テレビドラマでの同じキャストで進むので、ドラマファンには楽しいこと請け合いなのですが、冒頭にテレビドラマ版の振り返りはあるものの、映画単体としての面白さは、この展開だと少し欠ける気がします。

それにどうしても観ていて拭いきれなかったのが、信長の年齢設定でしょうか。高校生サブローはタイムスリップをして、戦国の世にやって来たのが弟・信行との織田家家督争いの頃で、おおよそ20歳前後。TVシリーズの終わりが小谷城の浅井攻め後くらいで、おおよそ39歳。信長が本能寺の変で死ぬのが、享年49歳。TVシリーズは一気通貫で観たので気にならなかったのですが、この50歳目前という信長の年齢に対し、サブローはずっと戦国の世に居続けているわけで、フケメイクもせずに、ほぼTVシリーズと同じ形で、本能寺の変を迎えるというのに違和感が凄いあって気になって仕方がなかった。おまけに、あのラストになるとサブローの年齢設定はどうなっているのか、、というところが甚だ拭えきれないままに、歯切れの悪い結末を迎えたように思えてなりません。

まぁ、それは他のキャスト陣も同じなので、そうやって目くじらを立てることなく、TVシリーズの大団円を映画で迎えれたので良しとしましょうか。それだったら、もうちょっとラストが盛り上がって欲しかった。結局、本作はテレビファンに向けた壮大なエピローグ作品の域を出ない作品に留まっているように思います。

次回レビュー予定は、「ザ・ウォーク」です。

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