『金メダル男』:出演陣がやたら豪華な作品だが、どこか惰性感をも感じる主人公の夢には共感できない。。

金メダル男

「金メダル男」を観ました。

評価:★☆

東京オリンピックで日本中が沸き立っていた1964年。長野県塩尻市に一人の男の子、秋田泉一が誕生する。小学校の徒競走で1等賞に輝いた幸福から、あらゆるジャンルで1等賞になることだけを生きがいにする。陸上、野球、サッカーというスポーツのみならず、絵画、書道、火おこし、鮎つかみなど、様々なジャンルで1等を獲得し続ける泉一。しかし、思春期に差し掛かる中学時代に、1等賞人生の雲行きを怪しくする”女の子”という存在に気づいてしまう。多感で誘惑が多い思春期を、持ち前の信念で乗り切ろうとする泉一だったが、次第に1等賞から見放されるようになってしまう。。2011年に上演された内村光良の一人芝居『東京オリンピック生まれの男』を、内村自身の原作・脚本・監督・主演で映画化した作品。主人公の泉一を内村と、「超高速!参勤交代」の知念侑李が二人一役で演じています。

最近では決められたドラマや映画、ニュースと野球観戦以外はめっきりテレビを見なくなってしまって久しいのですが、子どもの頃は、ほんとにテレビが恋人というくらいにかじりついて、アニメやバライティを見ていました。その中でスターだったのが、ドリフメンバーと、その後から来たダウンタウンとウッチャンナンチャン。今と違い、テレビでも数多くのお笑い(特に、コント番組)がやっていた時代、様々な形の笑いを提供してもらったことが、今でも映画(特に、コメディ)とか見るベースになっているなと感じることがあります。そのウッチャンナンチャンのウッチャンこと、内村光良が主演・監督を手掛けた作品。内村監督自身は、「ピーナッツ」や「ボクたちの交換日記」と長編映画の監督をやっているのですが、予告編で感じるお笑いとしての面白そうな部分をどう出してくるか期待を込めた鑑賞でした。

原作は舞台劇にもなっているだけあって、大きく崩壊している感はありません。でも、これどこかで観た感じがするなーとずっと感じていたのですが、物語の構成は違えど、「フォレスト・ガンプ」と感じが似ていたと鑑賞後に気づきました。本作は1等賞に固執する男、「フォレスト〜」は知的障害を抱えつつも、ある女の子にまっすぐな男、、と固執しているものは違えど、一度感じた想いにそれぞれ直球で生きようとしたことで、実は曲がりくねった人生でも、最終的には幸せを掴んでいくという構成。ストーリーの細かい比較はしませんが、大筋の流れは一緒なのです。でも、本作が「フォレスト〜」ほどの感動がないのは、単純に泉一という男が夢はあるものの、何かそれにまっすぐに生きているという純真さに欠けるからだと思います。人生を惑わすきっかけになった”女の子”という存在は基、何をしても行き当たりばったりすぎて、泉一自身が何か必死に生きている感がしないのです。「フォレスト〜」では主人公ガンプが知的障害があるという、どうしても純真にならざるを得ない設定上のメリットはあるものの、1等というこだわりはあるものの、どこか惰性に生きている感がする泉一の姿に共感することができないのです。

それでも、高校時代に泉一が作った”表現部”での活動は、何か前向きに生きている感が一瞬出ていて、文化祭のシーンなどはいい雰囲気を出していました。終盤での写真大賞でのシーンもそう。一瞬いい感じはあるのですが、そんなうまい人生は長くは続かないという現実と、1等への泉一の変なこだわり感が前に出て、次のシークエンスでは少しゲンナリとなってしまう。そんなシーンの繰り返しでは、如何にハッピーエンドでも感動することができないのです。

次回レビュー予定は、「ザ・ギフト」です。

コメントを残す