『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』:アメリカを代表する文芸作品の裏に秘められた、熱き2人の男の夢への物語!

ベストセラー

「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」を観ました。

評価:★★☆

「老人と海」を著した文豪ヘミングウェイや、「グレート・ギャツビー」のスコット・F・フィッツジェラルドを発掘した編集者マックス・パーキンズ。彼の元に、無名の作家トマス・ウルフの原稿が持ち込まれる。絶え間のない感情の波をそのままに原稿に書き連ねたウルフの原稿量は他の比較にならぬほど膨大で、様々な編集者が賽を投げた状態だったが、類まれない彼の才能を見抜いたパーキンズは父親のようにウルフを支える。ウルフにときには寄り添い、ときには厳しく原稿にメスを入れながら、2人は世に残る最高の最高の作品を仕上げていく。米文学史に残るベストセラー小説誕生の裏に隠された実話に基づくドラマ。トニー賞受賞のイギリスの演出家マイケル・グランデージ初監督作品。

一流の編集者が、無名の作家を20世紀を代表する作家に育てていくというお話。ときに編集者と作家の関係というのは、作品を生み出す作家より、作品を仕立てる編集者の力が大きいと言われることも多いそうですが、そうした編集者は残念ながら歴史には名を残していかないのも常。だけど、本作ではそうした一流編集者の存在があってこと、トマス・ウルフという作家が成り立っていったことがよく分かります。トマス・ウルフという作家自体を僕は本作まで名前を聞いたことくらいしかなかったですが、その名声は(本作が正しければ)パーキンズの存在があってこそということに尽きると思います。才能はあっても、膨大な枚数の原稿の中にその煌めきも埋もれていく。。それをまさに発掘し、整形し、研磨して、美しく輝く形にしたのが、パーキンズという人の偉大さなのです。

この映画の成功というのは、配役に尽きるところが大きいかと思います。秘めたる才能を持ちながら、自由と愛人に振り回されることになるウルフをジュード・ロウ、逆に編集者として堅実に、地味な一流を通すパーキンズをコリン・ファースという、ベストマッチングなイギリス人俳優同士の組み合わせになっています。あとは、地味ながらもフィッツジェラルド役のガイ・ピアーズや、ヘミングウェイ役のドミニク・ウエストなどは、それぞれの肖像画から抜け出してきたような本物そっくりの存在感を魅せるのもなかなか。逆に、ウルフを振り回す愛人アリーンに、ニコール・キッドマンはちょっと役不足なような気が。。キッドマンほどの力グイグイで来る人よりは、もう少し線の細い女優さんが演じたほうが、一層彼女の”サゲマン”ぶりが目立ったかなとも思います。

本作の唯一の欠点は、凄い俳優陣の割に、物語にそんなにびっくりした展開がなくて、全体的に地味なところでしょうか。。しっとりとして、文化の秋には相応しい作品ではあるんですけどね。

次回レビュー予定は、「七人の侍(4K上映)」です。

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