『七人の侍(4K上映)』:生きることを戦国エンタテイメントとして昇華した黒澤監督の名作!これは是非スクリーンで見て欲しい作品!!

七人の侍

「七人の侍(4K上映)」を観ました。

評価:★★★★★

麦の刈入れが終る頃、野武士たちがやってくる。昨年同じように襲われた村人は恐怖におののいていた。闘っても勝目はないし、負ければ村中皆殺し。今年も同じように収穫物や人質を差し出すしか仕方ないかと思っていたところ、村長でもある長老から、同じような野武士の恐怖に襲われた村が侍を雇うことで、危機を回避したという話を始める。村を守るには侍を傭うことだ、長老・儀作の決断によって茂助、利吉らは侍探しに町へと出発した。智勇を備えた歴戦の古豪・勘兵衛の協力で、五郎兵衛、久蔵、平八、七郎次、勝四郎が選ばれた。この六人の武士たちに加え、百姓の孤児として荒くれ者として育った菊千代が加わった、七人の侍たちは村人たちの訓練からはじめ、来る野武士たちの襲来に備えるのだが。。ご存知、黒澤明監督の1954年の名作が、4K上映でスクリーンに甦りました。

本作は、前に感想文を書いた「生きる(4K上映)」に次いで公開された、「午前十時の映画祭7」の中で公開された作品。「七人の侍」というと、昔、高校のときに授業の一環でなぜか見させられた思い出がありますが、そのときは観た印象しか覚えていなくて、どんな作品で、どのような凄さがあったかというのは、今回改めて見直して実感しました。これは凄い!の一言。「生きる」もいい作品でしたが、それとは全く違う形での力強さを感じます。なんといっても凄いのは、今スクリーンで観ても、圧倒的に迫ってくる臨場感と、物語を描く世界のスケールがすごくデカいということ。この圧倒的なスケール感は、今で言うと、「スター・ウォーズ」などで感じられるものと同じなのです。侍や百姓たち、敵となる野武士たちが縦横無尽に動き回ることはもとい、彼らが住む村が本当に自然の中で人間たちが切り開いてきた感がするのです。その大自然の中で、動き回る役者たちの動きに密着していくように動いていくカメラワークのダイナミズムさ。これがスクリーンで見ると、圧倒的な迫力で観ているこちらに迫ってくるのです。これは凄い!

正直、ちゃんと観ていると、繰り広げられるチャンバラ自体はあまりリアルさはなく、切りつけられても死んだのかどうなのか分からないという、チャチな立ち回りだなとも感じます。これは白黒ということもあるのですが、映画自体も戦闘をリアルに描くということよりは、人が右往左往として、とにかく動き回ることに注視しているからなのだと思います。実は、この動きにこそ、人がその場で必死に生きていることをリアルに感じるのです。百姓たちはとにかく自分たちの村を守ることに必死、侍たちは村人を守ってやることに必死、敵すらも生きるために明日の糧を得ようと必死、、みな生きるということにリアルに必死なのです。動きがなくなったら、それは死んだということ。常に考え、動き回ることこそ、”生きる”ことなのだという強いメッセージを、戦国の世を生きる人たちの目を通して、描いていることが本作を素晴らしいものにしていると思います。その中でも、百姓たちと侍との間にかわされるユーモアや、愛の営み、憎しみや悲しみの交流も劇としてしっかりと描いていく。”生きる”ことを大きなエンタテイメントとして昇華していることが、本作を名作たらしめるものにしているのです。

是非、この感動を体験すべく、機会があれば、一度スクリーンで鑑賞されることをオススメします。

次回レビュー予定は、「永い言い訳」です。

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