『何者』:就活とはとことん嫌な自分を見つめる時!? 描きたいことは分かるが、これは面白いか??

何者

「何者」を観ました。

評価:★★

同じ大学に通う5人の就活生たち。かつて演劇サークルに所属し、人を分析することが得意な拓人。拓人とルームシェアをし、天真爛漫ながらも目標に突き進む光太郎。光太郎の元彼女で、拓人が密かに想いを寄せる実直な瑞月。瑞月の友人で、人一倍”意識高い系”の理香。理香の恋人で、自由奔放さを謳いながらも、どこかに焦りを感じている隆良。それぞれが様々な悩みを抱えながら採用試験に臨むが、次第に秘められた本音や自意識が表面化し、相互の関係性に変化が生じてゆく。。「桐島、部活やめるってよ」の原作者でもある朝井リョウの直木賞受賞作を、「愛の渦」の三浦大輔監督が映画化した作品。

こう書くとネタバレになるかもしれないですが、これは典型的なミスリード系の作品だと思いました。予告編を観ると、就活に臨む5人の大学生の悲喜こもごも就活物語なのかな、、と思わせながら、真の目的は、、、というのがラストに描かれるタイプの作品になっているのです。確かに、これはこれでありだと思うし、演劇界出身の三浦監督ならではの舞台劇をうまく使った演出も見られるのですが、これは、、、面白いか!? と思うのが正直なところ。朝井リョウ原作ということで、ミスリードが逆に実直な学園ドラマを生み出していた「桐島、部活やめるってよ」とは真逆な形で騙される形になっていますが、こういう作品を期待してなかったなと思ってしまいました。丁寧に作られている分だけ、少し残念に感じてしまいます。

とはいいつつも、素材となっている就活というのは不思議な儀式だなと思います。社会人になる人は、どういう形にしろ稼いで、一人で身を立てる生活をしないといけない。義務教育や大学等の高等教育でもいろいろな知識は学べるものの、そこから自分はどういうことができる人間で、どういう価値で社会の一翼を担えるかなんて、全然分からない中で就職という荒波にさらされていくのです。自分の経験を思うと、正直、就活していた際に思い描いていたことは、入社した後に何1つ実現したものがない。会社の方針で、思い通りの仕事につける人なんて極わずかだし、希望部署に配属されたからといって、思うような仕事をさせてもらえるとも限らない。やっと、自分のやりたかったことにたどり着いたとしても、そこでは実は自分の能力は発揮されず、むしろ違う仕事を任された時に、新しい自分を発見し、成長することができた、、等々は当たり前のように起こっていると思います。そういう中で翻って就活とは、いろいろ形作ったハリボテのような自分を晒していくことに過ぎず、そうしう儀式めいた抽選ゲームに意味があるのかどうなのか、、と思えてきたりします。

就活にしろ、進学にしろ、真の自分は何なのか、、ということを持っている揺るぎのない人は強い。この映画の結論は結局のところ、そういうところなのでしょうか!?

次回レビュー予定は、「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」です。

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