『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』:彼女の作品は興味深いが、予告編以上の感動がないのが残念

ヴィヴィアン・マイヤーを探して

「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」を観ました。

評価:★★☆

決して自らの素性を明かさず、15万点以上の作品を残しながらも1枚も公表しないまま亡くなった女性写真家ヴィヴィアン・マイヤーの生涯に迫るドキュメンタリー。彼女の作品を偶然、近所のオークションで手に入れたジョン・マルーフがチャーリー・シスケルとともに共同監督を務め、彼女に関わっていた人々を探し出し、丹念にインタビューした映像を構成していき、マイヤーの人となりを紐解いていく構成になっています。

当初、予告編を観た時はすごく面白そうな作品に映りました。優れた写真が作品として世に出ることも、生涯家族を持たなかったマイヤーにとっては、家族や友人たちにもその写真を見せることもなかった。彼女はただ淡々と撮っていき、そのフィルムや現像した写真を大きな倉庫に溜め込み、時にはそれらの荷物を抱えながら、乳母・ベビーシッターとして、たくさんの家族の元を転々としていく。乳母として多少のエキセントリックな面も伺いながらも、決して内向的ではなかった彼女が、どうして写真を撮り続けていったのか。そして、生涯を通じて誰にも心を許さなかったこととは裏腹に、彼女が撮った写真にはすごく活き活きとした人や、その人の生き様が分かるような天才的な構図で人物が綴られているか、、多くの人の証言をもとに彼女の人生をあぶり出していく作品となっています。

多くの人のインタビューを通じ分かってくるのは、天才的な写真作品とは裏腹に、彼女自身の人生というのは少し影がある哀しいものだったということ。決して不幸な人生だったとは思いませんが、写真作品の自由さと対比されると、物悲しさを感じずにはいられません。何となく僕にも分かるのは、特に芸術家のようなタイプになる人間というのは、決して完全に1人では生きていないにしろ、凡人には伺い知れないような内面世界の拡がりが大きいんじゃないかということ。彼女の写真というのは、彼女がこの世に投影できた、彼女の内面世界そのものではないかと写真作品を観ていて感じてくるのです。

映画としては、そうした彼女の人生を切り取っていくところは凄いと思うものの、正直予告篇以上の感動が本編に感じられないのが残念なところ。もう少しインタビュー場面を割愛し、彼女の作品をじっくりとスクリーンで観たかったようにも思います。彼女の存在を認知できただけでも、この映画には価値が有るのかもしれないですけどね。。

次回レビュー予定は、「人生の約束」です。

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