『ルドルフとイッパイアッテナ』:創造力を掻き立てる映像表現は見事だが、ラストが小さくまとまってしまったのが残念。。

ルドルフとイッパイアッテナ

「ルドルフとイッパイアッテナ」を観ました。

評価:★★★☆

3D版にて。

岐阜で飼い主のリエちゃんと仲良く暮らしていた黒猫のルドルフ。ある日、出かけたリエちゃんの後を追ったら、運悪く長距離トラックの荷台に乗ってしまう。着いたのは、岐阜からはるか離れた東京。迷い歩くルドルフに声をかけたのは、街のボス猫・イッパイアッテナ。ルドルフはイッパイアッテナからノラ猫としての生き方を教わるのだが。。1987年に初刊が刊行されて以来親しまれ続けている児童文学シリーズを「ポケットモンスター」シリーズを手がける湯山邦彦と、「ファイナルファンタジー」で共同監督を務めた榊原幹典が3DCGアニメで映画化した作品。

これから秋に向けて、岐阜を舞台にしたアニメ作品が何作か登場しますが、その一発目が本作。といっても、岐阜が登場するのは映画の序盤のルドルフとリエちゃんとの生活を描く場面と、なんだかんだあって、ルドルフが岐阜を目指す終盤部分のみ。岐阜出身の僕としては気になった作品でもありましたが、少々登場場面が少ないのは残念(笑)。場所的には金華山と木曽川くらいの間なので、岐南から岐阜市の南東部辺りでしょうかね。岐阜に馴染みがある方は、この風景を観ても楽しめるかと思います(絵が綺麗すぎて、あまり岐阜感はないですけどね。。)。

物語としては、主人公のルドルフが飼い主から離れてしまい、再び飼い主のリエちゃんのもとに戻ろうと苦心しながら、いろんな新しい世界を学んでいくという”母と離れて…”のような形の作品。とはいいつつも、学ぶという過程を岐阜へ戻るロードムービーとして描くのではなく、同じような飼い主への望郷の念を抱える一匹猫イッパイアッテナの生き方に学んでいくという新鮮な形を取っています。なので、岐阜へ戻る旅は比較的短いのに対し、東京にてノラ猫として、そして知識をつけるためにイッパイアッテナからいろいろな知恵を貰う場面がほぼ作品の大部分を占める形になっています。素敵なのは、本から創造力を膨らませて「学ぶ」ことを楽しく描いていること。猫が文字を学ぶという一見奇想天外な設定なのですが、この何とも世界観を広げるような素敵な描かれ方は、小さい子にとって、素直に本を読むことが楽しくなるような夢のある設定になっています。

イッパイアッテナもキャラクターとして兄貴肌を感じるのもいいし、彼を取り巻くキャラクターも作品の盛り上がりにうまく花を添えています。全体的にまとまりもあり、楽しい作品なのではありますが、この作品が惜しいのはラストのオチのつけ方でしょう。原作ものなので、話として変えることは許されなかったかもしれないですが、岐阜への戻る旅へ向けて、ルドルフがイッパイアッテナとともにあれほど頑張った成果があるのに、ラストがああいう小さい形のハッピーエンドにしてしまうと、作品全体が小さくまとまってしまった感がどうしても拭えません。絵本で学んだ創造の世界のように、映画自身も、もう少し大きな目線でルドルフと、イッパイアッテナを大海原へ旅出させるような壮大なところを目指してもよかったように思えますが。。

次回レビュー予定は、「X-MEN:アポカリプス」です。

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