『ファインディング・ドリー』:大海原を描く映画は夏にピッタリだが、前作の面白さは越えられていない。。

ファインディング・ドリー

「ファインディング・ドリー」を観ました。

評価:★★☆

2Dの日本語吹替え版にて。

ディズニー/ピクサーによる大ヒットアニメーション「ファインディング・ニモ」。カクレクマノミのマーリンが行方不明になった息子ニモを探す旅を描いた一作目から、13年の年月を経て、その続編が誕生しました。今回の主人公は、前作でニモを探していたマーリンの前に現れたナンヨウハギのドリー。彼女はすぐ物事を忘れてしまうという癖を持っていたが、ニモを探す旅から1年後、ふとしたことから自分にも家族がいたこと思い出す。かすかな幼少期の秘密を解く鍵を求めて、マーリン&ニモの親子の力を借りながら、再び大海原へ旅立っていく。監督は、前作に続きアンドリュー・スタントン。共同監督に「ニセものバズがやって来た」のアンガス・マックレーンが務めています。

僕は「トイ・ストーリー」から始まるピクサーの作品の中で、「ファインディング・ニモ」が多分一番好きです(同じスタントンの「ウォーリー」もいいんですけどね)。その理由は少し書きにくいですが、この作品に登場するキャラクターたちがいろいろな欠陥を抱えているから。特に、ニモは片ヒレが小さく、そのままで泳ぐと真っ直ぐには泳ぐことができない。これに障害を抱えた子どもという姿を投影してしまうんですよね。そういう身体のニモに対し、母親は不在。そういう不遇の状況に対し、やはり父親であるマーリンはこれほどまでかというくらい過保護に育てていく。外の世界は危険がいっぱいだといって、自分が目の届く範囲に優しく囲んでしまう。しかし、ニモがその外の世界の危険に触れて失踪したとき、同時に外の世界にも、欠陥があろうが愉快に楽しく暮らしている仲間(前作の水槽の中で生きる生き物たちなど)がいることを知るのです。障害があることや、親が不在なことはたしかに悲しい。しかし、そういう苦しみ以上に、外の世界は広く楽しいことも待っている。マーリンとニモの冒険を通して、そういうことを楽しく教えてくれる傑作であり、どうしても自分の障害者としての経験や過去の思い出をも投影してしまうんですよね。

さて、そうした傑作の前作から生まれた続編の本作。実は、ディズニー/ピクサーの続編モノというのは、あまり当たった試しがないのが苦しいところでもあるのです。唯一成功したのは、「トイ・ストーリー2」くらいかな。「モンスターズ・インク ユニバーシティ」は及第点、「カーズ2」や「プレーンズ2」は前作の面白さを越えられないという形になっています。。こうなっちゃうのも実は理由があって、ディズニーの戦略として、1作目の劇場公開作として当たると2作目からの続編はビデオ(今ならDVD、Blue-Ray)シリーズとして製作費を格安にして売っていくという戦略が昔からあるんですよね。「トイ・ストーリー2」に関してはそういう戦略の中で、話として面白いので劇場公開につながったという経緯があります。近作では、続編ものとして最初から劇場公開をターゲットにはしていると思いますが、今までのそうしたジレンマを破ってくれるかという不安もあったんです。

そうした色眼鏡で観てしまったせいでもないでしょうが、本作はどうも面白さが弾けないんですよね。前作のキャラクターが総登場してくるのは楽しいのですが、新しいキャラクター(水族館のキャラ)たちがあまり尖っていなくて、唯一の主要キャラとなるタコのハンクくらいが気を吐いているほど。後半となる水族館からの脱出シーンはパワフルで面白いですが、そこまでの物語も上手く弾けてこないように思います。そもそも今回主人公になるドリーが、キャラの設定上仕方がないとはいえども、すごく多弁過ぎる。。あまり喋りまくるキャラクターというのは、作品全体の雰囲気とのマッチングが非常に難しいように思っていて、せっかくの冒険劇である前半も落ち着いてじっくり見ることができないのです。全体の構成もスピーディーではるんですが、逆に言えば、少しお話としても薄っぺらく感じてしまうのも事実。前作がしっかりとした面白さを出してくれていた分、本作はあくまでオマケとして気軽に観るのが正解かもしれません。

次回レビュー予定は、「ヤング・アダルト・ニューヨーク」です。

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