『ブルックリン』:一人の少女が、新天地で大人になっていく旅を描く作品!

ブルックリン

「ブルックリン」を観ました。

評価:★★★☆

1950年代・アイルランド。家族と離れ、ニューヨークで暮らし始めるエイリシュ。新天地での慣れない新生活に戸惑いながらも、イタリア系移民トニーとの恋をきっかけに彼女の人生は大きく変わっていく。。コルム・トビーンの同名小説を原作に、「グランド・ブタペストホテル」などの作品で活躍している若手女優シアーシャ・ローナン主演で映画化した作品。監督は「BOY A」のジョン・クローリー。脚本を「17歳の肖像」「わたしに会うまでの1600キロ」などの良作を生み出しているニック・ホーンビィが担当しています。ちなみに、第88回アカデミー賞作品賞、主演女優賞、脚色賞にノミネートされた作品となっています。

ニューヨークとアイルランド人というのは切っても切れない関係にあります。19世紀初頭は「ギャング・オブ・ニューヨーク」でも描かれていたように、アイルランド人コミュニティが徒党を組んで、いろんな民族との抗争を繰り返していたり、時代を経て、「ロード・トゥ・パーディション」や「ミラーズ・クロッシング」といったギャング映画にも、よくイタリア系マフィアと対立する組織としてアイリッシュ系というのは登場してきたりしています(後者2本はニューヨークが舞台ではないですけどね。。笑)。そうした移民たちが最初に上陸する場所、自由の国アメリカという象徴が本作にも存分に描かれます。しかし、本作は「ギャング・オブ〜」のような力強さというよりは、1人のウブな少女が、国情も苦しいアイルランドから、ニューヨークに出るしか選択肢がなく、そこで1つ1つの経験を通しながら、自分という殻を1つ1つ破っていき、大人の女性へと成長していく物語になっています。ややこじんまり感はなくはないですが、女性が主人公の映画らしく、とてもしなやかでスマートな作品になっています。

印象的なのは、ある出来事をキッカケにニューヨークからアイルランドへ一時帰国する後半部。10代〜20代の早い段階で家を出た人は分かると思いますが、家を出た直後は人寂しく、故郷への望郷の念に駆られる(いわゆる、ホームシック状態になる)人が多いんじゃないかと思います。しかし、一人で生きていく中で、おぼつかない手つきながらもいろいろなことを経験し、新しい土地で友人・知人、そして恋人を作っていく中で故郷に戻ると、あんなに戻りたかった故郷が何か小さく見えてしまう。あんなに親しかった昔の友だちや、家族や近所のコミュニティの些細なことが、とてつもなく小さいことにウジウジしていることに愕然とすることは、それだけ自分自身が自由の味を知り、大人になっていったという証拠なのでしょう。そうしたシーンを見ていくと、僕自身が20代の頃によく里帰りすると感じたことがまざまざと思い出されます(まぁ、もう少しオトナになると、古い慣習の良さも分かったりするんですけどね笑)。そうした大人へと育ててくれたニューヨークこそ、エイリッシュがこれから住むにふさわしい街。これは一人の少女が大人になる過程とともに、彼女がどうやってニューヨークに愛されて、大人になったかを知る旅でもあるのです。

次回レビュー予定は、「インディペンデンス・デイ リサージェンス」です。

コメントを残す