『セトウツミ』:高校生のダベリには、人生の大事なものが詰まっている!

セトウツミ

「セトウツミ」を観ました。

評価:★★☆

男子高校生二人が放課後に河原でまったりと喋るだけという、此元和津也による同名人気コミックを、若手人気俳優の池松壮亮と菅田将暉のW主演で映画化した作品。監督は、「さよなら渓谷」の大森立嗣。

高校生のときにやっていて、今はやっていないものといえば、同級生や同じ部活、バイト先の先輩・後輩とツルむことだろうか。コンビニや部活終わりの部室、本屋、校庭、そして本作のような河川敷と場所は様々だろうけど、とにかくたむろって喋っているだけ。大人になれば、居酒屋、喫茶店やカフェ、喫煙場所等々のだべり場が移るだけの人もいるだろうけど、時間を気にせずに、本当に暗くなるまでなんでもないことを喋ってられるときというのは、本当にあの時しかなかったなと思います。僕は工業高専出身ということもあって、高専のときは他学科の人間、大学のときだったらサークルやバイト先の人間といろんなことを語り合っていたことの中に、いろんな考え方やモノの見方があるなーとしゃべり場であり、学び場でもあったかなとも振り返ると感じ入ることができたりします。大人になった今、そうしたツルンでたむろっている若者を見ると、ただただ危なそうな輩(やから)にしか見えないので疎んじてしまうのですが、もう少し大人として大きな懐を持たないといけないなとも思ったります。

そうした意味で観た本作は、そうしたツルみ友だちである、瀬戸と内海の物語になっている。見た目も、性格も真逆の2人が、あることをキッカケにこうしたツルむ友だちになることも、なんか若者のあるあるみたいな感じがする話だし、何気ない2人の会話の中に、それぞれの(若者としての)人生の悩みが凝縮されているのも見ていて微笑ましい。それに何といっても、この2人の会話の掛け合いが関西弁っていうのがいいですね。僕は関西の人間ではないですが、仕事で関西に来てから、この人と人との垣根をすごく低くする関西言葉というのはすごく愛らしくて好きなんですよね。互いの掛け合いの中で、2人が会話で作り上げていく世界がどんどんと彩られていくのです。2人の会話で見える、人間の不思議なつながりを感じる作品。惜しむらくは、エピソード毎に分けていることで物語の進行にスムーズさが失われているような気がしますが、作品の魅力を低くするようなものではありません。作品としては小品の部類ですが、観て満足感は得られる作品になっています。

次回レビュー予定は、「森山中教習所」です。

コメントを残す