『嫌な女』:思わず観ているこちらが赤面してしまう平板なシーンもあるが、監督のこれからも期待できる作品!

嫌な女

「嫌な女」を観ました。

評価:★

桂望実のベストセラー小説の映画化作品。人と打ち解けられない堅物弁護士の徹子のもとに、突如、同い年の従妹・夏子がやってくる。堅実な徹子に比して、夏子は幼いころから自由奔放かつワガママな性格。徹子はそんな夏子を疎んじていたが、夏子は男から金を引き出す詐欺師に成り果てていた。邪険にする徹子は結局、夏子の行動に振り回されていくことになるのだが。。女優として活躍する黒木瞳が映画化権を自ら取得し、初めて監督を担当していることでも話題の作品です。

有名俳優の初監督作というのは、野球でいうと、有名校で名を馳せたドラ一のルーキーが、プロの世界でどういう活躍を魅せるかというくらい、傍目から見てもドキドキするものです。なので大抵、作品作りに意欲がある俳優は製作(プロデュース)をいくつかこなしてから、初監督に望む形が多いと思いますが、黒木瞳に関しては(少なくとも)そういう話を聞いたことがなかったので、監督をするということは少し意外でした。確か、テレビ作品で監督をしたことはあったかと思いますので、その経験で、どういう作品を生み出していくかということが見ものといったところもあります。ただ、同じ女優陣でも力のある吉田羊、木村佳乃の力を借りても、正直この程度か、、と思わせる残念な出来だったと思います。まず、お話の筋しか追えてない、全体的にノッペリとした話になりすぎていると思います。真面目な徹子に対して、自由奔放な夏子。水と油のような関係の彼女たちが、最初は反発しながらも、ある1つの出来事で共闘していくという、バディものとしてはありがちな展開ですが、どうも素直に2人の対立軸を描こうとしない。徹子は徹子で最初から真面目というより、だいぶ暗いキャラクターに終始してしまっているので、夏子との反発というより、徹子自身の話がなかなか上向きにならないのも少し見ていてイライラするのです。

そんな徹子の存在に対し、救いになっているのは夏子を演じる木村佳乃の役者としての技量というところでしょうか。最初から弾ける明るいキャラクターなのですが、その中でも少し寂しさというか、暗い部分を内包しているキャラクターを上手く表現していると思います。暴走しているような夏子のキャラが、実は徹子という存在が小気味良いブレーキとなることで、2人でいることが活き活きしてくるのです。ただ、その歯車のかみ合わせがなかなか上手く回り出さない。ようやく、ラストの結婚式のシーンで昇華するのですが、結構そこまでの展開がチグハグ過ぎる気がします。序盤のシークエンスも、やや素人っぽい演出が見えてしまうのも、どこか観ているコチラ側が赤面してしまうくらい。それでもラストの味わいはなかなか良いので、デビューはほろ苦ですが、黒木監督のこれからは素直に期待したい作品になっていると思います。

次回レビュー予定は、「マイケル・ムーアの世界侵略」です。

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