『マネーモンスター』:展開される空間は非常に狭いが、スピーディーな展開に引き込まれる!

マネーモンスター

「マネーモンスター」を観ました。

評価:★★★

人気財テク番組の生放送中に番組がジャックされ、視聴者の前で衝撃の真実が暴かれる。内容はこれのみですが、小さい空間を広く見せるような演出力がピリリと光る作品。主演はTVキャスター役にジョージ・クルーニー、ディレクター役にジュリア・ロバーツという二大巨塔に、ジャックする犯人として、新進気鋭の若手ジャック・オコンネルが挑んでいます。監督は、俳優としても活躍しながら、監督業も多くなってきたジョディ・フォスター。

昨今の金融というのは、まさに情報戦。インターネットやスマートフォンなどの普及により、一般の人でも気軽に投資を行えるような時代に(日本ではあまり身近な人は少ないですが)なってきました。日本でもフィンテック(金融IT)という言葉を聞いた人がいるかもしれないですが、そうした身近な金融にはITの力が大きく働いています。本作でも描かれているように小額の投資を中心に、人工知能の技術を使い、投資自体を自動化するような仕組みも備わってきています。しかし、そこは0や1を操る情報戦と同じ。ITによって金融自体が身近になると同時に、情報操作によって市場が操られる危うさをも潜んでいるのです。それは放送というメディアであったり、口コミのようなマクロなものから、IT技術の中に分からないように組み込まれるものまで様々。僕もそうですが、資産というのがコンピュータ上の数字でしか弾き出してこない時代だからこそ、こうした危うい世界とも表裏一体である怖さをも、本作は描いているのです。

まぁ、こうした難しいことを理解しなくても、単純に放送ジャックもの、そこに潜む陰謀モノとしては非常にサスペンスフルな作品になっていると思います。しかし、陰謀の核となっている金融操作の部分がちょっとやそっとで分かりにくく、犯人は明確なものの、事件の背景がイマイチ理解し難いのが欠点ではあるかもしれません。悪い親玉がいて、そこに放送ジャックが事件として発生してしまう。TVキャスター、ディレクター、そして犯人の三者が、その事件とともに陰謀に如何に挑んでいくかが、本作の肝となるのです。物語は非常にスピーディーですし、演じる役者の味も十分に感じられる。大作感はないですが、素直に楽しめる小品に仕上がっていると思います。

次回レビュー予定は、「64 後編」です。

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