『エクス・マキナ』:エヴァの造形はもとい、物語も含め、全てのデザインの統一感が心地いい!

エクス・マキナ

「エクス・マキナ」を観ました。

評価:★★★★

今年の第88回アカデミー賞で、視覚効果賞を受賞したSFスリラー。IT企業の社長が所有する山間の別荘に1週間滞在するチャンスを得た、あるプログラマー。そこでは女性型ロボット“エヴァ”に搭載された人工知能の不可思議な実験が行われていた。エヴァの神秘的ともいえる所作に、プログラマとしての好奇心がくすぐられるが、同時に人工知能である危うさにも触れていくのだった。。

昨今のロボットや人工知能ブームに乗っかったような話の構成ですが、映画の雰囲気としては、ポスターのエヴァのアーティスティックな描写にも分かるように、アート系というか、ミニシアター系っぽい柔和でモノトーンな感じを受ける作品になっています。この映画の良さというのは、まさにこのモノリシックな作品のトーンと、VFXをアートの道具として、その作品のトーンと上手く合わせていくデザイン性に尽きることでしょう。予告編を観ても感じると思いますが、本当に壁に飾ってとっておきたいような美しい形の作品になっています。そこにお話的にも押井守作品や、士郎正宗の「攻殻機動隊」にも通じるような、精神と人工知能という人工の精神と、ロボット(物体)と肉体との境界線を行き来するような、かなり哲学的な話になっていきます。詳しいネタバレになってしまうかもしれないですが、エヴァのようなロボットたちが実はたくさん作られていることが分かる後半部でも、女体という人体の美しさと、ロボットの人工美が融和しているようなシーンもあって、美しさを強調しているように思います。

ただ、こうした高尚なテーマを扱う分、若干とっつきにくいことと、全体的なテンポが極端にスローなので、見ている人によっては眠気を誘われる作品かもしれません。僕としては、エンジニアとしても、研究者としても興味があるテーマを扱っていることと、「ブレードランナー」の冷酷版のような非情な最期を、やはりロボットたちが冷静なアルゴリズムで弾きだしてしまうところをサラッと描くところがスリラー作品としても、なかなかの恐怖を味わせるシーンになっていると思います。「アイ、ロボット」や「A.I.」のような分かりやすいエンタテイメント性がない分、やや、見る人を選ぶ作品かもしれないですが、AppleやGoogleのようなシンプルデザイン&アースティックさに共感できる人は楽しめると思います。

次回レビュー予定は、「ヒメアノ~ル」です。

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