『世界から猫が消えたなら』:全てが美しくまとまりがある作品だが、もう少し心に響くメッセージが欲しい。。

世界から猫が消えたなら

「世界から猫が消えたなら」を観ました。

評価:★★☆

映画プロデューサーの川村元気が執筆し、90万部を超えるベストセラーとなった同名小説を、佐藤健と宮崎あおいの共演で映画化した作品。題名から、おおよその展開は予想できるお話ではありますが、これを上手く映画化するのも監督の腕でしょう(笑)。今回、その大役を与えられた監督は、「ジャッジ!」の永井聡。

余命わずかな青年が、世界からモノを消してゆくことと引き換えに、悪魔から1日の命を与えられるという、、なんか、どこかのコントで見たような聞いたような設定。僕は原作小説がブーム(未読ですが)になっているときから、何となく、この題名で、こういうあらすじならば、こういう展開しかないだろうという、ほぼそれを裏切らない展開で物語は進んでいきます。とはいうものの、本作でいいなと思ったのは、原作小説から作られているブランド感というか、どこか感じる瑞々しさを映画版でも踏襲し、原作ファンにもきっと素直なイメージの作品に仕上げているだろうこと。特にいいのが、佐藤健演じる主人公・僕と、学生時代の恋人との思い出として挟まれる、ヒッチハイクの旅の情景。ネタバレは避けますが、そこで展開される哀しくも美しい旅の思い出が、作品全体をピシっと引き締める効果をもたらしていること。予告編にもあるイグアスの滝での宮崎あおいの叫びのところなど、単純にいい話に収めなかったところがいいポイントになっています。

映画好きにとっては、僕の親友に映画好きの友がいたり、恋人が映画館で住み込みで働いていたりと、心躍るような設定があるのも楽しいところ。しかし、こういう話によくありがちなのですが、余命わずかな僕の、もう少し生きることに対する執着というか、生物臭い、泥臭いドラマを盛り込めなかったものか。。ヒッチハイクの旅以外の全てが、本当にTVドラマのように、すべてすべて美しい物語になってしまうところが、ちょっと非現実(まぁ、悪魔が現れるのだから、現実離れはしているとは思うのですが)的過ぎて、心奥底の感情まで揺さぶられることがなかったのが正直なところ。少女マンガのような、美しい物語を楽しみたい人には、それなりに泣ける展開もあり、生きる意味合いをテーマとしても十二分に展開してくれる作品ではあるのですが、もう少し心に突き刺さるようなメッセージが欲しかった作品でもあるのです。

次回レビュー予定は、「すれ違いのダイヤリーズ」です。

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