『さざなみ』:ざわめき立った心はすべてを押さえられないことを語る。。ランプリングの表情は必見の一作!

さざなみ

「さざなみ」を観ました。

評価:★★★★

アカデミー賞にノミネートされ続ける女性といえば、近年ではメリル・ストリープであったり、ジュディ・デンヂであったりすると思いますが、玄人好みといえば、シャーロット・ランプリングを忘れてはいけないでしょう。同じイギリス人俳優のデンヂとは違って、どこか陰のあるキャラクターを演じ続けるランプリング。本作も、長年教師として勤め、結婚45年の夫ジェフと幸せな引退生活を送っていながら、心に沸き立ったざわめきを押さえられない女性ケイトを好演しています。監督は、「ウィークエンド」のアンドリュー・ヘイ。

万年幸せな生活とは程遠い僕には分からないのですが、何もかも順風満帆な生活を送っている人にとって、その幸せに水を差すような疑念があったとき、それは大昔の些細なことであっても徐々に大きな心の渦となってざわめき立つものなのでしょう。本作では幸せな結婚生活を送っていたはずの夫婦に、突如持ち上がった夫の昔の彼女の存在に、ケイトの心はにわかにざわめき立つ。最初は古い昔話として聞き流していたケイトですが、その日からジェフが見せる奇妙な行動を見逃さずにはいられない。最も、この疑念さえ抱かねば、夫の行動は本当に普段と変わりなかったものと映ったかもしれない。しかし、ざわめき立った彼女の心はそれを押さえられず、夫が隠してきた過去を次々と発見していく。。

全ての行動には、その人の心の姿が反映されているといいます。その中で意識下にあることは何とかコントロールできるものの、無意識にやってしまうことはどうも制御が効かなくなるのが人間というもの。じゃあ、逆に意識外に置こう置こうと思うたびに、逆にそのことが気になって仕方がなくなる。世にいう、スキャンダルの面白さもこういうところに源泉があるのでしょう。本作のケイトのように、学校教師になるほどの聡明な人ほど、そうした心の動揺には歯止めが効かなくなるように思えてもきます。ラストで全てを悟ったケイトが見せる表情は、結婚45周年パーティーというハレの場でも抑えきれない感情がこもっていた。正直、ここ最近観た、どのホラー映画よりも驚がくな表情を魅せる彼女の演技は一見の価値があります。

次回レビュー予定は、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」です。

コメントを残す