『孤独のススメ』:こんな素敵な出会いがあるのなら、孤独でいるのも悪くない!?

孤独のススメ

「孤独のススメ」を観ました。

評価:★★★★

田舎町で1人静かに暮らす初老の男性の前に、突然奇妙な男が現わる。孤独に暮らしていた男性は、彼との共同生活を始めたことから人生が変わってゆく、、という内容のオランダ映画。てっきり邦題や映画の宣伝パッケージを観ても、北欧の映画かと錯覚してしまいましたが。前に、アムステルダム美術館の映画も観ていた気もしますが、オランダ映画は多分人生初。邦題も気になっての鑑賞となりました。監督は本作がデビュー作となる、ディーデリク・エビンゲ。

タイトルから想像するに、まずは孤独に暮らしている初老の男性フレッドの描写が結構挟まるのかと思いきや、オープニングからほどなくして、奇妙な男との同居生活がいきなり始まっていきます。この辺りが、孤独な初老の男が一人で生きるよりは、変わった人でも二人以上で生きたほうがハッピーだ、、という単純な作品というミスリードしている、こちら側の予想を裏切る展開となっていくのです。確かに映画を観ていると、奇妙な男との共同生活にはなっていくものの、奇妙な男の存在によって、フレッドが感じている喪失が埋め合わされるものでもないのです。だって、奇妙な男とは全然コミュニケーションが取れないから(笑)。しかし、この奇妙な男が起こす予想外もしない行動によって、彼自身が失ったものの存在の偉大さをより鮮明に感じていくようになるのです。有名な歌の歌詞にもありますが、「○○がいないことの悲しみ」ではなくて、「○○がいないと思うことの悲しみ」に苛まれる。何も孤独を埋めてくれない奇妙な男ではあるものの、彼がいることによって、愛する人がいないことを感じずに済む。そして次第に、奇妙な男が与えてくれる別の形の愛で、フレッドの孤独が癒されていくのです。

高齢化社会に入っている日本にあって、高齢者を中心に単身の世帯というものが、今も、そして今後も確実に増えていきます。家族がいない、もしくは遠く離れて暮らしているという状況は容易には変えられないものの、一人一人の心の持ち様で、気持ちまでも孤独の生きることはなくなるのではないかと思っています(孤独死問題など社会のセーフティネットの話はありますが、それはまた別の話として)。個人が感じる孤独の苦しみを少しでも低減する工夫とは、やはり、一人一人が多様な価値観を認め、皆が社会として共生していく。単純ですが、これに尽きると思います。本作に出てくる奇妙な男も、奇妙だからとして遠ざけてしまっていたら、彼がくれた愛情を感じることはできなかった。決して孤独が怖いわけじゃなく、孤独だと感じることのほうが怖いということを、優しい眼差しで教えてくれる良作だと思います。

次回レビュー予定は、「劇場版 響け!ユーフォニアム」です。

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